水谷隼 卓球の注目度上昇に万感「やっと時代が追いついた」暗黒期から大逆転
東京五輪卓球混合ダブルスで金メダル、男子団体でも銅メダルを獲得した水谷隼(30)が30日、所属の木下グループ本社に五輪の報告で訪れた。集大成の大会で史上初の金字塔を打ち立てたが、「遠い過去に感じる。あっという間に五輪が終わって、そこから毎日メディアに出させていただいて、朝から番まで忙しい毎日で、すごく時間がたつのが早い」と充実した様子で現況を明かした。
今大会を機に卓球の注目度も各段に上がった。立役者の水谷は、五輪後はテレビ番組などに引っ張りだこで、ツイッターのフォロワーも約10万人増えたという。卓球界を引っ張ってきたカリスマは「本音を言っちゃえば、やっと時代が追いついてきたなと思う」と、長年思い描いていた夢の実現に万感の思いを吐露した。
以前、福原愛や石川佳純といったスター選手がそろう女子に比べ、男子は同じように取材を受けても、番組で全カットは当たり前。さらに、女子の映像が再放送されるという憂き目を味わった過去もある。しかし、16年リオ五輪で男子初のメダルを獲得し、東京五輪では日本初の金メダルを獲得。自らの手で状況をひっくり返した。
「15年前、初めて卓球がテレビで放送されるようになって。ずっと日の当たらない男子は、日の当たらない中でやってきた。自分は必ず『卓球男子みてもらえればすごさがわかる』と言ってたが、一度も誰にも見られることもなく粛々と活動していた」と暗黒期を振り返るとともに、「リオでたくさんの方に見ていただいて、すごく評価してくださって、結果も残すことができて。そして今回の東京五輪で満開の花が咲いたというか」と感慨深げ。「卓球の素晴らしさをいろんな人に知っていただけてすごくうれしかったし、この流れを消さないように張本(智和)選手を中心に、後輩たちに頑張ってもらいたい」とバトンを託した。
現役引退を表明しているだけに、現在は仕事のオファーをほぼ全て受けているという。「オファーに対して誠実に答えたいっていうのがまず一つ。今まで自分が孤独で生きてきたので、誰かに頼られるとか必要にされるっていうことを感じたことがなくて。すごくそれがうれしい」と明かし、「子供たちが、卓球選手がテレビに出ていたら、いずれ自分たちも活躍してテレビに出たいとか、コマーシャルに出たいとか、強い憧れを持ってくれると思うので、自分が頑張ってテレビに出ることによって(今卓球をやっている)子どもたちも頑張ってほしい」と競技普及への切実な思いを語った。