村上、有終の金 母の前で「すべてぶつけた」20年の集大成 執念の0・1点加点で逆転
「体操・世界選手権」(24日、北九州市立総合体育館)
最終日を迎え、種目別決勝2日目が行われ、女子床運動では村上茉愛(25)=日体ク=が14・066点で金メダルに輝き、演技後に現役引退を表明した。男子鉄棒では東京五輪金メダルの橋本大輝(20)=順大=と内村航平(32)=ジョイカル=の対決が実現し、橋本が15・066点で銀メダルを獲得。内村は14・600点で6位に終わり、メダルを逃した。女子平均台では芦川うらら(18)=静岡新聞SBS=が14・100点で同種目67年ぶり金メダルを獲得した。男子跳馬では米倉英信(24)=徳洲会=が銀メダルだった。
閉会式後に日本代表選手が登場したサプライズセレモニー。マイクを渡された村上は「聞いてない」と笑いながら、笑顔で競技に別れを告げた。
「私は今日で引退します」-。
万感の“ラスト舞”だった。「とにかく楽しかった」。無観客の五輪ではかなわなかった22年間に及んだ競技生活を支えてくれた母英子さんの目の前での演技。それが集大成だったはずの五輪で、辞められなかった理由だった。「20年のすべてをぶつける」の言葉通り、冒頭代名詞の大技シリバスを力強く成功させると、テクノ調の速い曲調にのり、躍動的に技とダンスを繰り出していった。フィニッシュを決めると、伸ばした手をグッと握った。少しだけ目を覆い、涙をこらえて、笑顔で歓声に応えた。
得点は当初、13・966点で2位と表示されたが、村上陣営の採点問い合わせが通り、難度を示すDスコアが修正。0・1点加点され、“逆転”した。床の前に出場した平均台では銅メダルを獲得。苦手だった種目での勲章も含め、執念が実った有終の美となった。
第2の人生は、まだ決めていない。ただ、自らがけん引してきた体操女子のために、尽力するつもりだ。今大会、女子が男子を上回る金メダル2つを獲得した。「日本女子でも戦っていけるという結果を残せた。パリ、ロスでたくさんメダルがとれるような裏方のお手伝いできればと考えているところ。たくさんメダル、決勝に残らせたい。今までは自分1人だったので。団体でメダルを取ることを達成できなかった。それをかなえたい」。輝く瞳で未来を見据えた。