「ボクシング男子・世界選手権」（５日、ベオグラード）

　決勝が行われ、バンタム級の坪井智也（２５）＝自衛隊＝がマフムド・サビルカン（２０）＝カザフスタン＝を、ウエルター級の岡沢セオン（２５）＝ＩＮＳＰＡ＝が、オマリ・ジョーンズ（１９）＝米国＝をともに判定で破り、日本勢初の同選手権金メダルをダブルで獲得した。過去の日本勢最高は１１年ミドル級準優勝の村田諒太で、同一大会での複数メダル獲得も初。今大会は、金メダルに賞金１０万ドル（約１１４０万円）がかかっていた。

　愚直なほど好戦的なボクシングで、世界を制した。岡沢と同じ２５歳の坪井が、強豪カザフスタン選手に５－０で完勝。日本勢初制覇のコールを聞くと、両手を広げて天に雄たけびを上げた。

　サウスポースタイル主体で時にスイッチする相手に１回は２－３と劣勢だった。それでも「焦りはなく、取り返せると思った」と２回以降はジャブから連打を浴びせ、相手の心を折った。

　全日本選手権４連覇の実績を持ちながら、１９年のフライ級決勝で五輪銅メダルの田中亮明に惜敗。五輪を逃し、コロナ禍にも見舞われた。約１年間、試合がない中で「もう一度基本からつくって、やり直そうと思った」と基礎から全ての技術をつくり直した。

　技術を競うアマチュアボクシングで「相手も対策してくる。その上の上をいくボクシングをしたい」と求道者の姿勢を貫く。大会を通じてスタミナ、テクニックとも抜群の安定感を見せた。「目指すはパリ五輪で金メダル」。あと３年。拳に磨きをかけ続ける。

　◆坪井　智也（つぼい・ともや）１９９６年３月２５日、静岡県出身。浜松工高から日大に進学。卒業後に自衛隊入り。ライトフライ級で全日本選手権を１４年から４連覇。１８年アジア大会は２回戦敗退。１９年の全日本選手権の決勝で敗れて東京五輪代表を逃した。今大会２回戦で１６年リオ五輪フライ級金メダルのゾイロフ（ウズベキスタン）を判定で破った。右構え。身長１６１センチ。