柔道・東海大V5「名誉と尊厳の戦い」5月クラスター発生で「犯罪者扱い」の苦難も

 「柔道・全日本学生優勝大会」(14日、千葉ポートアリーナ)

 団体戦で争われ、男子は決勝で東海大が筑波大を5-0で下し、5大会連続25度目の優勝を果たした。昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で大会史上初の中止となり、2年ぶりの開催。3位は日体大、国士舘大が入った。

 東海大は絶体絶命のピンチから蘇生した。準決勝の日体大戦は、残り2人で1-3と崖っぷち。しかし、そこから副将で世界選手権90キロ級代表の村尾三四郎(3年)、大将の中島大貴(4年)が続けて一本勝ちし、3-3で内容勝ちという大逆転で優勝につなげた。

 「私は半分、死んだ(負けた)と思った」。上水研一朗監督は苦笑いしながら、敗退も覚悟したと本音を明かした。ただ、試合前のミーティングから劣勢を迎えることを想定して「こういうケースはある」と口酸っぱく伝えていたといい、「一丸となってよく乗り切って逆転してくれた」と目を細めた。

 最多優勝記録を誇る大本命ながら、2年ぶりの開催となった今大会は“失地回復”の戦いでもあった。5月に部内で新型コロナのクラスター(集団感染)が発生し、活動停止。再開後も道場やトレーニング施設の使用に制限が掛かり、141人の部員が十分な練習を行えなくなった。

 また、何よりもこたえたのは、部員の自尊心が削られたことだった。当時は国内で感染が急拡大しており、対策を講じていてもあらゆる集団でクラスターが頻発していた状況だったが、感染者が執拗(しつよう)に批判される空気は社会に充満していた。柔道部も執拗(しつよう)に責められる状況にあったといい、「まるで犯罪者のような扱いだった」(上水監督)。学内では健康記録表を早朝に提出することが義務づけられるなど、有無を言わさず厳しいルールを突きつけられた。

 本格的に練習を再開できたのは9月中旬だったが、クラスター発生に対する自責の念を強く植え付けられたため、チーム全体が意気消沈。上水監督は大会に向けて部員の自尊心を取り戻そうと「(失った)名誉と尊厳を懸けた戦いだ」とハッパをかけ、鼓舞した。

 主将で19年世界ジュニア選手権100キロ超級王者の松村颯祐(4年)は、学内や部員同士でも衝突が起きるなど、異例の環境下でのチームづくりに苦慮したと明かしつつ、「乗り越えられた」と目を潤ませた。自身は準決勝で左脚太もも裏を肉離れしたものの、冷静に両足をついても掛けられる裏投げを狙って一本勝ち。決勝も一本勝ちでけん引し、「去年一年(大会が)消えたのも大きかったが、2年ぶりに優勝できたのは先輩、OBたちにも伝えたい」と胸を張った。

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