不明選手巡るバッハ会長の対応をアスリート団体が批判「中国当局の悪意ある宣伝に加担」
国際的なアスリートらによる団体「グローバル・アスリート」は22日、女子テニスのダブルス元世界ランク1位の彭帥(Peng Shuai)が中国共産党の最高指導部メンバーだった張高麗元副主将に性的関係を強要されたと告白した後、安否不明となっている問題で、21日に国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長らがテレビ電話で「安全」を確認したと発表したことについて、批判する声明を発表した。
声明では「IOC会長とIOCアスリート委員会委員長の彭帥とのビデオ通話は、アスリートに対する性的暴力および虐待の申し立てを完全に無視している。性的暴力と女性アスリートの幸せに対する無関心を示している。彭帥が生きていることに安心しましたが、IOCが電話で確認したことは彼女の安全や幸せを保証しない」と断言。問題の発端となった性的暴力の告発についてまったく触れていない内容に「この声明はIOCを中国当局の悪意ある宣伝に加担させ、基本的人権と正義への配慮に欠けている。IOCの行動は虐待的な権威主義体制と一体となり、人権を無視している」と、指摘した。
バッハ会長が彭帥を来年2月の北京五輪前に夕食に招待したことについても「彼は多くの女性アスリートが陥る致命的な深刻な状況を嘲笑した」と、厳しく断じた。その上で「彭帥が中国から安全に出国し、彼女が性的暴行の申し立てについて完全かつ透明性のある調査が行われるまで、IOCに中国五輪委員会の活動を停止するように要請する。アスリートと国際政治コミュニティはIOCに彼らの行動の責任を負わせなければなりません」と、締めくくった。
IOCは21日にバッハ会長が彭帥と30分間のテレビ電話の通話を行い、無事を確認したと発表。「彼女は北京の自宅にいて、安全で元気であると説明しました。友人や家族と一緒に時間を過ごすことを好んでおり、現時点ではプライバシーを尊重してもらいたいと考えています。ただ、彼女は彼女の愛するスポーツであるテニスに関わり続けるでしょう」と説明した。
ただ、国際的な懸念は収まらず、英ガーディアンなどによると、IOCの声明を受けて、中国市場からの撤退も示唆しているWTA(女子テニス協会)は、「彭帥の姿を見ることができたのは良かったが、検閲や強制なしでコミュニケーションできるかという点について、WTAの懸念を払拭したりするものではない」と、コメントした。