照ノ富士の体は「ずるい」 両膝の回復支えたトレーナーが驚がくした理由
「大相撲九州場所・14日目」(27日、福岡国際センター)
初日から14連勝で千秋楽を待たず2場所連続、6回目の優勝を果たした横綱照ノ富士。十両復帰決定後の19年12月からは大リーグ、五輪、Jリーグ選手を多数サポートする「MTX ACADEMY」で両膝回復に取り組んだ。同施設の渡辺健二トレーナー(44)は朝と晩、毎日、自宅に通い、3時間も膝の可動域のリカバリーを手がけた。
プロの目で最初に膝を見た印象は「腫れぼったいし曲げる感じも弱い」と難敵だった。だが「15日間持たせる」ことは可能だと考えた。一つは「骨格」。日本力士とはフレームが違う。「もともと体が大きい。相撲をやるために大きくしたわけじゃない」と膝への負担は最小限と見た。
さらに体を触って分かった。「手術跡もきれい。日本人にはない肌のつや。傷の治り具合とか、珍しい。日本人にしてみればこれはずるい」と次元の違うレベルだった。
柔らかさ、筋肉の張り。多くのアスリートを手がけてきたが、「頂点にいる人たちはみんな似ている。野球の上の方の選手と筋肉の感じが似ていた」と間違いなく大リーガークラスと同じだった。加えて「膝さえ戻れば絶対、戻れる。何とかしてくれ、何とかしてくれ」とすさまじい執念を日々、感じた。
怪物のような肉体に鋼のメンタルがここまで復活した要因。「体重も一番かかる競技で、膝に一番かかるけがをやって」。約半年のタッグだったが同氏にとって最強の男を手がけた貴重な経験になった。(大相撲キャップ・荒木 司)