宇良“三度目の正直”で技能賞「夢かなえられた」“異能”評価覆し正攻法の技能相撲に
「大相撲九州場所・千秋楽」(28日、福岡国際センター)
人気業師の平幕宇良が初の三賞となる技能賞を獲得した。千代丸には敗れたが堂々の10勝(5敗)を挙げ復活の1年締め。2度の右膝手術を乗り越えた不屈の男に悲願のうれしい勲章となった。14日目に優勝を決めた一人横綱照ノ富士は大関貴景勝を押し出して自身初の全勝V。優勝争いを演じた再入幕の阿炎が3回目の敢闘賞、隆の勝が2回目の敢闘賞を獲得した。
業師に最高の栄誉がやっと贈られた。宇良は「びっくりしました。うれしいです、本当にうれしいです」と何度も繰り返して喜んだ。三賞インタビューでは「相撲界に入ってからの夢だった。夢をかなえられてうれしい」とかみしめた。
2度の右膝じん帯断裂。手術、長いリハビリからはい上がった。「2度と(幕内で)取れないと思った。ここまで来たのは感慨深いものがある」と、奇跡の復活イヤーだった。
今場所は足取り、肩すかし、とったりと多彩な妙技で白星を積み上げた。八角理事長(元横綱北勝海)は10日目、「もう小兵ではない。正統派の技能相撲」と最高評価した。
前回幕内の17年夏場所で11勝を挙げたが三賞はなし。小兵で飛んだりはねたりのアクロバット相撲は“異能”と見なされた。
21場所ぶり再入幕した今年の名古屋場所、10勝を手にしながら、またも三賞はならず。「前回も自分の相撲が技能ではないと言われた。もらえないのは納得している。縁がない」と受け止めた。
しかし前回とは違う。リハビリの間に体重も20キロ以上増えて147キロ。体もムキムキにビルドアップ。当たって押す圧力が増し、正攻法の技能相撲に変身。“異能”の評価を徐々に覆していった。
横綱照ノ富士と同様、まさに不屈の魂。来年初場所(1月9日初日、両国国技館)は上位総当たり戦の地位が濃厚で新三役も視界に入る。「ここまでやってこられた。しっかり稽古に励んで幕内で十分戦える力士を目指したい。もうちょっと力を付けないといけない。技も?頑張ります」。来年もウラ技で魅了する。