米国 北京五輪「外交ボイコット」中国の人権侵害に抗議
バイデン米政権が6日、来年2月の北京冬季五輪・パラリンピックに政府代表を派遣しない「外交ボイコット」を発表した。中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権侵害に抗議する姿勢を示す狙いで、選手団は通常通り参加する。
サキ米大統領報道官は記者会見で「北京五輪・パラに外交的、公式的な代表を派遣しない」と表明した上で、「中国などで人権(の尊重)を促進するための行動を取り続ける」と強調。プライス国務省報道官は「他の国々も近く発表することを想定している」との見通しを示した。英国は閣僚らを派遣しないことを検討していると報じられており、オーストラリアも同調する考えとされる。
一方、国の威信をかけて冬季五輪に取り組む中国は猛反発だ。
在米の中国大使館は「北京五輪は何ら影響を受けない。成功裏に開かれる」とツイッターで表明。中国国連代表部は「スポーツを政治問題化し、分裂や対立を引き起こそうとしている」と談話を発表した。さらに中国外務省の趙立堅副報道局長は7日の会見で「強烈な不満と断固とした反対」を表明し、米国への対抗措置として2028年ロサンゼルス五輪を外交ボイコットする可能性も示唆した。
中国の元副首相に性的関係を強要されたと告白した同国の女子テニス選手、彭帥さんの身の安全が懸念されている問題も米欧は人権問題として注視。「平和の祭典」である五輪を巡る異例の対立激化で、米中関係全般に影響が及ぶのは避けられない情勢だ。
岸田文雄首相は7日、バイデン米政権が北京冬季五輪の「外交ボイコット」を発表したことに関し「五輪や、わが国の外交にとっての意義などを総合的に勘案し、国益の観点から自ら判断していきたい」と話した。日本政府の対応について、松野博一官房長官は「現時点で何ら決まっていない」と強調したが、中国の人権侵害を根拠に強い姿勢を示す米国に配慮すべきだとの認識は政府内で共有されている。閣僚の派遣には消極的な意見が大勢で、スポーツ関連組織の幹部にとどめる案が検討されている。