阿部詩 五輪金メダル支えた相棒に“恩返し”M-1ゲスト出演直前まで献身サポート
「柔道・全日本実業個人選手権」(19日、滋賀県立武道館)
東京五輪女子52キロ級金メダリストの阿部詩(21)=日体大=が“付け人の付け人”を買って出た。男子60キロ級に、自身の練習パートナーを務める森和輝さん(23)=近畿医療専門学校=が出場。初戦で反則負けとなったが、詩も東京から駆けつけて献身的にサポートし「改めて付け人の大変さが分かった」と裏方のありがたみをかみしめた。
詩の恩返しだった。この日の夜には「M-1グランプリ」へのゲスト出演が決まっていたが、東京五輪本番も練習相手として支えてくれた相棒が2年ぶりに実戦復帰するとあって、東京に帰るタイムリミットまでは現地に帯同。アップから付き添い、試合中は「我慢、我慢!」「ここから!」などと鼓舞した。
試合はポイントのないまま延長に入り、最後は森さんが相手を両手で抱えてしまう反則(ベアハグ)によって指導3つとなり敗戦。詩は「(森さんが)全然動かへんし、全然先に組みにいかへんし…」と、自分が試合するようには思い通りいかず、もどかしそうにしながらも「ケガがなくて良かった。私も試合が空いていたので、久々に試合の感覚がよみがえった」と笑った。
森さんは日体大時代、詩の兄・阿部一二三(現パーク24)の同期だった縁もあって19年11月から詩の練習パートナーを務めており、現在は近畿医療専門学校に所属。自身2年ぶりの実戦に臨むに当たり、2カ月前から本格的な練習を積んだというものの「最後は体力が切れた。詩みたいに限界以上まで自分を追い込めないし、頭では分かっていても試合で動けない。改めて彼女のすごさを感じた」と脱帽した。
詩も慣れない付け人の仕事に難しさを感じたようで「私は選手の方が向いているし、たぶん和輝君は付け人の方が向いている(笑)。お互いの大変さが身にしみて分かったんじゃないですかね」と実感を込めた。互いのポジションをコンバートしてみたことで発見があったといい、「たぶんこれから(森さんと)もっといい関係を築ける。尊敬し合うって大事やから」。24年パリ五輪での連覇を見据えて絆を深めた様子だった。