【五輪コラム】参加することに意義あり 冬季五輪に挑む異色の選手たち

 男子大回転で44位だったサウジアラビアのアブディの2回目=2月13日、延慶(共同)
 スケルトンでスタートする米領サモアのクランプトン=2月10日、延慶(共同)
2枚

 金メダルや表彰台を目指して激しく競り合うトップ選手がいる一方で、冬の競技そのものと格闘する選手たちもいる。北京冬季五輪参加の91カ国・地域のうち、中東のサウジアラビアと中米カリブ海の島国ハイチが冬季大会初参加でアルペンスキーに出場した。雪の降らない地域からも、地元での普及、発展を願って「五輪は参加することに意義がある」とばかりに、「雪と氷の祭典」に果敢に挑む選手たちがいる。

 ▽開会式は民族衣装で

 1994年のリレハンメル大会以来、28年ぶりの冬季大会参加となったのが南太平洋に浮かぶ島国の米領サモア。男子スケルトンに36歳のネーサン・クランプトンが初出場した。ケニア生まれの米国育ち。2010年バンクーバー大会をテレビで見て、スケルトンに挑むことを決めた。ところが、代表チームとけんか別れし、新たな所属先を探したところ母方の先祖にポリネシア出身者がおり出場にこぎ着けた。

 旗手を務めた開会式では「自国の文化を紹介したい」と、上半身裸の民族衣装で国旗を持ち注目を集めた。このスタイルは4年前の平昌大会でトンガの選手が極寒のスタジアムで披露して大きな話題となった。トンガは海底火山噴火で甚大な被害を受けたために不参加。クランプトンは「トンガの選手がやったので大丈夫と思っていた。旗を持つ手は冷たかったけど、ほかは大丈夫」と笑顔で話した。

 「骸骨」の意味もある競技名のスケルトンにちなんで髑髏(どくろ)が描かれたヘルメットで登場して話題となったが、実力の方もまずまず。「緊張した」という1回目こそ22位だったものの、徐々に順位を上げて4回の合計タイムは25人中19位だった。実は昨夏の東京五輪にも陸上短距離に出場している。今後はそちらに専念したいという。

 ▽アルペンにも異色選手

 冬季五輪初参加の2カ国の選手はどちらもアルペンスキーの代表で、アルペンにはジャマイカからも選手が初参加。3人とも男子大回転に出場した。

 国土のほとんどが砂漠で、夏には気温が50度にもなるサウジアラビア。24歳のファイイク・アブディは幼い頃から雪が降る地中海沿いのレバノンでスキーを始めた。フランスやスイスで技術を磨いたあと、16年に米ユタ州の大学入学後も練習を積んだという。20年に帰国後は「スキーとサウジをつなぎたい」と、砂漠を滑るサンドスキーの普及に取り組んでいるという。

 ハイチ代表の19歳、リシャルドソン・ビアノは幼い頃にフランスに住むイタリア人夫婦の養子となった。そこでスキーを始め、真剣にフランス代表になることを考えていたという。16歳の時に雪の降らない常夏の故郷にあるハイチ・スキー連盟から「ハイチ代表になってほしい」との打診を受けた。ビアノは「悪い冗談だと思ったけど、ネットで調べたら本当にスキー連盟があった。両親とも相談して受けることにした」という。昨年の世界選手権では大回転に35位と健闘した。

 ジャマイカ代表のベンジャミン・アレクサンダーは38歳でスキー歴わずか6年の異色選手。英国でジャマイカ系の父と英国人の母の間に生まれた。DJをしていた15年、カナダのスキー場での仕事に招かれたのが雪に触れるきっかけだったという。スキーは始めたが、本気になったのは18年平昌大会を観戦してからだという。米国人コーチによると「技術はひどいが、怖いもの知らず」という根性で五輪代表の座をつかんだ。

 ▽「完走したぜ」

 男子大回転は前夜からの降雪で、人工雪で固められたバーンの上に軟らかい雪が残る状況。霧で視界も確保しにくい悪コンディションだった。80人以上がスタートした1回目はビアノを含む33人が途中棄権する大荒れのレース。そんな中、アブディとアレクサンダーは見事に2回とも完走した。

 2回目の完走者46人のうち、アブディは44位でアレクサンダーは最下位の46位。参加することに大きな意義があるレースとなった。(共同通信・江波和徳)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

スポーツ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(スポーツ)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス