【記者の視点】スーツ規定違反で高梨沙羅ら失格 運営面“問題”があったのは明らか
明らかに異常な夜だった。2月7日に行われた北京五輪のスキージャンプ混合団体。日本の1番手で飛んだ高梨沙羅の1本目の直後、まさかの事態が起こる。スーツ規定違反による失格。責任を感じ、泣き崩れる高梨の姿は、不穏な大会の始まりに過ぎなかった。
その後もドイツの個人銀メダリスト、アルトハウス、ノルウェーのオプセト、ストロム、オーストリアのベテラン、イラシュコの女子選手計5人が同規定で失格に。メダル有力国がことごとく脱落する事態となった。
この5選手の過去の国際大会での同規定での失格を見てみる。国際スキー連盟(FIS)の記録をみると、高梨は09年から13年間で3度、アルトハウスは08年からの14年間の記録で一度もなかった。オプセトは8年間で1度、ストロムは10年間で3度、イラシュコは02年からの20年間で2度。これらの選手たちが五輪の、しかも1種目の競技中に一斉に失格となった。運営面で何らかの“問題”があったのは明らかだ。
ただ、選手や検査担当者の話で様々な裏側が報じられているものの、FISなどの公式な機関が検証、調査した形跡はない。太もも回りが約2センチ大きいとされた高梨は、全日本スキー連盟の聞き取りに、通常はスパッツをはいたまま太ももを測定されるが、違反となった際にはスパッツを脱がされたことなどを主張するなど、失格となった選手らが検査の際、W杯より規定が厳しく適用されたと訴えている一方で、大会側は否定している。日本の担当者が「各国ともギリギリのところで勝負している」と話したように、より遠くに飛ぶために規定スレスレのスーツが使用されているのも確かなのだろう。実際にFISも「公式な抗議はきていない」としている。
ただ、あの夜が、公式な検証も、説明もされないままでいいのか。悲劇を繰り返さないためにも、すっきりした“着地”を求めたい。(デイリースポーツ・大上謙吾)