高梨沙羅 復活V どん底からW杯最多更新62勝目「今までの中で一番うれしい優勝」
「ノルディックスキージャンプ・女子W杯」(2日、リレハンメル)
北京五輪の混合団体でスーツの規定違反により失格となった後、初の実戦に臨んだ高梨沙羅(25)=クラレ=が130メートル、132メートルの合計291・5点で優勝した。今季2勝目で、W杯通算では歴代最多を更新する62勝目を挙げた。2位は五輪「銅」のニカ・クリジュナル、3位は五輪「金」のウルシャ・ボガタイ(ともにスロベニア)で、五輪のメダリスト2人を上回り、復活を果たした。
失意のどん底からはい上がり、高梨が見事な復活優勝を遂げた。再出発の舞台で底力を発揮し「苦しい時間が長く続いていたし、五輪の後ということもあって今までの中で一番うれしい優勝」と勝利の重みを強調した。
不利な追い風でも大きな飛行曲線を描く好ジャンプをそろえた。1回目で2位につけ、2回目はさらに2メートル伸ばしてトップに。公式練習、予選、試技と合わせて1日で計6本を飛び「久しぶりに飛べて純粋に楽しい」という感覚を取り戻した。
北京五輪の混合団体で失格となり号泣。メダルを逃した責任を一心に背負い、自身のインスタグラムでは「今後の私の競技に関しては考える必要がある」と、引退すら覚悟する心境をつづった。
五輪後も失格が頭から離れず、しばらくは部屋から外に出られなかったという。練習再開もままならず前週のW杯を欠場し、リレハンメル入りしても「心の整理がつかない状況だった」と明かす。
出場を決断したのは試合当日の朝だった。「最終的に出ると決めたのは、応援してくださる皆さんの言葉があったから」と背中を押され、再びジャンプ台に戻ってきた。
25歳で競技人生の岐路に立ち、もう一度戦い続ける道を選んだ。「やめることで責任が取れると思っていたけれど、それは自分の勘違いだった。この優勝は自分の力ではなく、周りの人たちの力で勝ち取れたもの」。価値ある勝利をつかみ、大きな一歩を踏み出した。