日本オリンピック委員会（ＪＯＣ）、全日本柔道連盟の会長を務める山下泰裕氏（６４）が１２日、都内で取材に応じた。ロシアのウクライナ侵攻を受け、プーチン大統領（６９）を非難する声明を１１日に出したことについて説明。「大変心を痛めた人間の一人として、１日も早く侵攻がやみ、これ以上犠牲者が出ないことを祈っている」と話すとともに、旧知のプーチン氏について「（以前と）大きく変わってしまった。全くの別人」と変貌を嘆いた。

　前日、山下氏は自身のホームページ上で「柔道家であるプーチン大統領によるロシア軍の侵攻のニュースを聞くにつけ、心を痛めてきました。これらの行為は全く容認することは出来ません」と非難するメッセージを発信した。これまではウクライナ支援以外で公的に踏み込んだ発言をすることはなかったが、凄惨（せいさん）な情勢を鑑みて、自身の考えを改めたといいう。

　この日は「一人間、一柔道家として」と断った上で私見を述べた山下氏。これまではスポーツ団体のトップとして「専門外の国際政治に首を突っ込むべきではない」などの考えから言及を避けていたことを明かし、「昨今の（ロシア軍の）非人間的な行動の数々を見るにつけ、効果はなくてもメッセージを出すべきではないかと思った」と、このタイミングでの非難声明になった経緯を明かした。

　プーチン氏とは柔道を通して親交があり、柔道家としての立ち居振る舞いに一目置くこともあったというが、「（今の姿は）全く想像できない。大きく変わってしまったと思う」と、失望をあらわにした山下氏。２０００年９月にプーチン氏が来日した際、柔道の総本山である東京・講道館に訪れてスピーチした際のことを振り返り、「多くの人が心を打たれる振る舞いだった。（それが今では）全くの別人。その時とは全然イメージが違った。今のプーチン大統領に柔道家（としての同氏）の姿を重ねるのは無理がある」と嘆いた。

　プーチン大統領は柔道愛好家として知られ、国際柔道連盟（ＩＪＦ）は２０１２年に八段を授与。同連盟の名誉会長も務めていたが、ウクライナ侵攻を受け、職務停止処分を受けている。

　山下氏は、プーチン氏との関係性について「あくまで柔道を通しての接点しかなかった」といい、メールなどのやりとりもしたことはなかったと強調。また、今回の非難声明について「（プーチン氏にとって）不快なメッセージなのでたぶん届くことはないと思うが、届けてくれたらありがたい」と述べた。