体重の壁に挑んだ軽、中量級五輪王者が初戦で散る 大野「柔よく剛を制すは幻想」高藤「次こそは」
「柔道・全日本選手権」(29日、日本武道館)
体重無差別の日本一決定戦が行われ、体格の壁に挑んだ軽、中量級の五輪王者2人は初戦で敗れた。
中量級ながら5年振り3度目の挑戦となった男子73キロ級五輪2連覇王者の大野将平(30)=旭化成=は初戦で関東王者で、2階級上となる90キロ級の前田宗哉(自衛隊体育学校)に優勢負けとなった。序盤から果敢に技を仕掛け、中盤からは大外刈りで真っ向勝負を挑んだが、パワーで跳ね返され、有効を奪われた。重量級相手に異例の正攻法を演じた大野は「ノーガードでやらせていただいた」。現行ルールでは足取りや旗判定がなくなったことで、軽量級が勝つことは以前よりも至難となっている。「自分自身の限界を感じましたけどね。『柔よく剛を制す』というのは幻想に過ぎない。私がやりたかったのは軽量級や重量級に関係なく、非現実的な勝負。やりたいことはできたんじゃないかな」と、受け止めた。
4年ぶり2度目の出場を果たした東京五輪男子60キロ級金メダルの高藤直寿(28)=パーク24=は1回戦で、90キロ級の田中大勝(アドヴィックス)と対戦。1分12秒、腕ひしぎ十字固めで一本負けした。
開始50秒で力ずくで上に持ち上げられると、強烈な裏投げでたたきつけられて、技ありを奪われた。そのまま腕ひしぎ十字固めで腕を伸ばされて、完敗。「脳振とう気味。(体側ではなく)背中をついていたら死んでいたかもしれない」と重量級との戦いのリスクを口にした一方で「もう一度世界選手権、五輪で優勝して(推薦出場で)全日本選手権に戻ってきて、次こそは1勝したい。戻ってきます」と、再びこの舞台に帰ってくることを誓った。