故斉藤仁氏の次男・立が初日本一!「第一歩刻めた」14分超え死闘で世界王者撃破 親子制覇は史上初
「柔道・全日本選手権」(29日、日本武道館)
体重無差別の日本一決定戦が行われ、1988年大会の優勝者で95キロ超級五輪2連覇の故斉藤仁氏の次男・斉藤立(20)=国士舘大=が決勝で、21年世界王者の影浦心(26)=日本中央競馬会=を14分超えの死闘の末、足車で技ありを奪い優勢勝ち、初優勝を飾った。親子制覇は史上初となる。
準決勝の9分超えに続き、14分超えの激闘。それでもしっかりと最後まで技を出し続け、世界王者から技ありを奪い、亡き父も立ったことがある日本の頂にたどりついた。
息を切らせながらの場内インタビュー。「ちょっとまあキツいですけど。色んな人に支えられて柔道できていると感じた」と汗をぬぐった。父とともに全日本の優勝者に名を刻めたことについては「本当にお父さんには、まだ五輪も勝ててないので、並べるレベルじゃない。まだまだお父さんのような柔道を目指していきたい」と語り「第一歩を刻めたと思います。自分はまだまだ挑戦者。やっていくしかない。何が何でも勝ち続けていくつもりでいます」と、前を見つめた。涙はなく、晴れやかな表情だった。インタビュー後には母三恵子さん、兄一郎さんと歓喜の抱擁を交わした。
15年、闘病中だった父仁氏に、最後に掛けられた言葉は「稽古に行け」だった。教えを胸にまい進してきた20歳のホープ。初戦の2回戦は前田宗哉(自衛隊)に内股で一本勝ち。3回戦は、過去2度敗れている上田轄麻(日本製鉄)を相手の反則で撃破した。準々決勝は、一色勇輝(日本中央競馬会)に大外刈りからの横四方固めで合わせ技一本。192センチ、160キロ超という巨体から繰り出す切れ味鋭い投げ技を武器に、進撃を続けた。
準決勝では東京五輪100キロ超級代表で、4年ぶり3度目の優勝を狙った原沢久喜(29)=長府工産=と初対戦。得意技の内股、体落としを掛けて崩していった。指導2つをリードして優位に立ちつつ、お互いに技を掛け合う激闘で延長に突入。試合時間9分を過ぎたところで、技が出ない原沢に3つめの指導が入り、攻勢を緩めなかった斉藤が粘り勝ちした。9分56秒の死闘の末、撃破。世代交代を印象づけるような勝利だった。重量級再建の期待を担う24年パリ五輪の星は、そのまま頂点へと駆け上がった。
国際大会では、昨年11月のグランドスラム(GS)・バクー大会を優勝。最終選考会となる全日本選手権を制したことで、この後開かれる強化委員会で、世界選手権代表に選出される可能性がある。
◆斉藤立(さいとう・たつる)2002年3月8日、大阪府出身。国士舘大3年。父はロサンゼルス、ソウル五輪で2大会連続金メダルの斉藤仁さん(享年54歳)。5歳から柔道を始め、父直伝の体落とし、内股などが得意技。大阪・上宮中3年時の16年に全国大会を制覇。父と同じ東京・国士舘高に進み、18、19年インターハイで2連覇。国士舘大に進学し、昨年11月のGSバクー大会でシニアの国際大会を初制覇した。左組み。192センチ、約165キロ。