柔道男子７３キロ級で五輪２連覇の大野将平（３０）＝旭化成＝が５日、都内で行われた東京五輪公式映画「東京２０２０オリンピックＳＩＤＥ：Ａ」の会見に出席した。自身も劇中に登場し、五輪連覇に向けた葛藤や勇姿が映し出されている。「スクリーンに映っているのは間違いなく自分自身のはずだが、自分じゃないかのような気持ちで見ていた。私自身が東京五輪で表現したかった、柔道家として、もっというと人として表現できることは何かということを映画として表現していただいた」と感慨深げに語った。

　総監督を務めた映画監督の河瀬直美氏は奈良在住ということもあり、大野が拠点を置く天理大にも撮影に訪れていたという。特に東京五輪の決勝では気迫を前面に押し出して相手をねじ伏せたが、人知れず恐怖を感じていたといい、「自分でも久しぶりに決勝戦のシーンをスクリーンで見て変な汗が出たし、今思い返しても怖かったなと感じる」と述懐。「今後現役を続けていく上で、今も（モチベーションに）浮き沈みを感じていたり、戦いに戻ることへの怖さを日々感じている。それを乗り越えるような勇気をもらったような映画でもあり、怖さと引き続き向き合っていきたいという思いを持つことができた」と明かした。

　河瀬監督からは「最初にお会いしたときはめちゃくちゃ怖かった。“柔道家”大野将平ですよ？怖いですよ、気迫がすごい」と告白されたが、この日は柔和な表情ではにかんだ五輪王者。「柔道家オーラを消そうと（笑）。こういう（競技ではない）場なので、柔道家の自分が来るのもどうかというのがあったので」と笑った。

　今作では、大野以外にも国内外のさまざまなアスリートの人間模様が描かれている。「（全柔連の）山下会長をはじめ、自分（の心）に突き刺さる言葉も多々ありました。（人には）それぞれの金メダルがあると思うので、見ている方自身の金メダルを目指して人生を戦っていく活力になるような映画だと思うので、ぜひご覧になってほしい」と呼びかけた。