五輪組織委が最終報告書 森発言、開閉会式スキャンダル、各問題どうまとめられた?

 東京五輪・パラリンピック組織委員会は21日、都内で理事会を開催し、新型コロナウイルスによる史上初の1年延期で昨夏に開催された大会の公式報告書を公表した。13年の招致決定から大会までさまざまな不祥事、トラブルが起こった同大会。各問題はどのようにまとめられたか?

 ◇国立競技場

 「ザハ・ハディド氏のプランは、スポーツの躍動感を思わせる流線型の斬新なデザインであり、その造形性は大きな話題を呼んだ。巨額の建設費用が見込まれたことから、幾度となく精査が行われ、建設規模の縮小が図られることとなった。建設資材、労務費等の高騰による影響は大きく、建設に対する批判の声が高まった。安倍首相がそれまでの整備計画案の白紙撤回を表明したことに伴い、計画が再検討されることとなった」

 大会のメーンスタジアムの新国立競技場は、12年にイラク出身で英国在住の建築家、ザハ・ハディド氏のデザインが採用されたが、建設費が当初の予定を大きく上回る2500億円以上にかさむことが判明し、安倍晋三前首相が白紙撤回。その後、建築家の隈研吾氏が手掛けた案を採用され、建設された。

 ◇エンブレム

 「15年7月にエンブレムを発表したが、ベルギーのグラフィックデザイナーが当該エンブレムは自身が創作したロゴマークに類似しているなどと主張し、IOCを相手取り、エンブレムの使用差し止め等を求める訴えを提起した。組織委はエンブレム創作デザイナーからエンブレムデザインの創作経緯等を詳しく確認し、当該エンブレムはベルギーのロゴマークの著作権を侵害するものではないと判断していた。しかしながら、エンブレム創作デザイナーから、創作したエンブレムはベルギーのロゴマークを模倣したものではないが、この点につき一般国民から理解を得ることは難しく、ひいてはオリンピックのイメージに悪影響が及んでしまうため、エンブレムを取り下げたいという申し出がなされた。また、一部のデザイナーの選考過程に不明瞭さや密室性があったことについて国民から批判が寄せられ、組織委は、これらのことを総合的に勘案して、エンブレムを撤回し、新たに強いエンブレムを策定することとなった。なお、その後、上記のベルギーのグラフィックデザイナーによるエンブレム使用差し止め訴訟は途中で取り下げられたため、エンブレムによる著作権侵害は認定されなかった」

 日本人クリエーティブディレクター、佐野研二郎氏がデザインした大会の公式エンブレムが採用されたが、海外に酷似したロゴがあることを指摘され、組織委が使用中止を発表。再選考となり、16年4月、現在の藍色の「組市松紋」で描かれた新デザインに決定した。

 ◇開閉会式の責任者変更

 「2021年1月からは、コロナ禍における開会式及び閉会式の演出企画を限られた時間で効率的に実現するため、演出企画チームを解散し、同チームのエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターのうち一名が総合企画・エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターに就任した」

 簡素化に伴い、開閉会式の演出を担当していた狂言師の野村萬斎氏を統括とする演出チームの解散が発表された。その後、開閉会式の演出責任者を務めた振付師のMIKIKO氏が組織委から半年間連絡がないまま、責任者を交代させられて辞任したこと判明した。演出担当は、クリエーターの佐々木宏氏を総合統括とした新チームが引き継いだ。

 ◇森喜朗前会長の女性蔑視発言

 「2021年2月、森会長がJOC評議員会における自身の発言による混乱の責任を取って辞任した後、御手洗組織委員会名誉会長を座長とする8名で構成する候補者検討委員会の議論を経て、同月18日、冬季及び夏季のオリンピアンであり、当時オリパラ担当大臣を務めていた橋本聖子氏が新会長に就任した」

 組織委の森喜朗会長が、JOC評議員会で「女性がたくさん入る会議は時間がかかる」などと発言。女性蔑視とも取れる発言が、ジェンダー平等を掲げる大会にふさわしくないとの声が殺到し、辞任した。後任には一時、元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏が浮上したが、その後、検討委員会を経て、五輪相を務めていた橋本聖子氏が就任した。

 ◇開閉会式担当の統括が女性侮辱演出により辞任

 「21年3月には、同ディレクターが人権に関する不適切な発言により辞任」

 開閉会式の企画、演出の統括を務めていた佐々木宏氏が、開会式で女性タレントの容姿を侮辱するような演出を公式ながら提案していたと週刊誌で報じられ、批判が殺到。辞任に追い込まれた。

 ◇大会直前に音楽、演出担当が過去の発言を問題視され、辞任、解任相次ぐ

 「開催直前には複数のクリエーティブチームのメンバーが過去の言動についての指摘を受け、辞任や解任となる事態もあったが、コロナ禍における社会情勢等を踏まえながら、クリエーティブチームを中心に演出企画内容の具体化を図っていった。この点については、インターネットによって情報が蓄積し、拡散していく中で、スタッフを選定する際にどの程度の粒度で過去の言動等をチェックしていくのか、また、過去の言動と現時点での活動の関係性や評価をどう整理するのかといった課題が残った」

 開会式の楽曲担当だったミュージシャン小山田圭吾が、過去にいじめ加害者だったことを雑誌で告白していたことが判明。小山田氏は謝罪したが、国内外からの批判が収まらず、辞任を申し出て、組織委が受理した。開会式の冒頭で使う予定だった小山田の楽曲は使用しないことに決まった。また、開会式でショーディレクターを務める予定だった元ラーメンズの小林賢太郎氏によるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)を巡る過去の発言が問題視され、開会式前日に解任された。

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