【小林祐梨子の眼】田中希実 ここ一発の集中力で「三兎」を追う可能性

 オンラインで対談する小林祐梨子さん
 6月の日本選手権女子5000メートルで優勝した田中希美(右)
 5月の静岡国際800メートルで優勝した田中希実(中央)
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 15日(日本時間16日)に開幕する陸上の世界選手権(米オレゴン州ユージン)で、田中希実(22)=豊田自動織機=が800メートル、1500メートル、5000メートルと中長距離では異例の3種目に出場する。1500メートル前日本記録保持者の小林祐梨子さん(33)は、同郷で親交の深い田中の「常識離れした挑戦」に期待を寄せた。

  ◇  ◇

 のんちゃんから800メートルの出場が決まったと連絡があり、思わず聞き返しました。それほど常識離れした挑戦です。「二兎を追う者-」と言いますが、彼女は一つ一つにポイントを合わせる研ぎ澄まされた感性があります。ここ一発の集中力で、「三兎」を追う可能性はあります。

 通常なら前回大会の5000メートル出場から1万メートルへと距離を伸ばしていく流れです。しかし、そこから逆に強みでなかったスピードに磨きをかけ、1000メートル、1500メートル、3000メートルの日本記録保持者に。今やスピードは武器になりました。

 6日のホクレンディスタンスの3000メートル優勝は素晴らしい内容でした。「会心の走りだったね」とメッセージを送ると「ラストで勝負できなかった」と反省しきりでした。常に「世界」という見えない敵と戦っているのでしょう。800メートルでの決勝進出は、2分を切らないと厳しい。でも、トップのスピードを肌で感じることは大きな経験になるはずです。(08年北京五輪5000メートル代表)

 ◆小林祐梨子(こばやし・ゆりこ)1988年12月12日、兵庫県小野市出身。須磨学園高3年の06年に1500メートル4分7秒86の日本記録(当時)を樹立するなど“スーパー女子高生”として注目される。08年北京五輪5000メートル代表。09年世界選手権の同種目で決勝進出。15年に引退し、現在は競技解説やコメンテーターとして活躍。日本パラ陸上競技連盟理事、ワールドマスターズゲームズ理事などを務める。岡山大卒業。16年に結婚し、2児の母。

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