田中希実 父・健智コーチと「2、3日に1回は修羅場」 他人とは違う厳しさもある
陸上の世界選手権(米オレゴン州ユージン)が15日(日本時間16日)に開幕する。東京五輪の女子1500メートルで日本人初の8位入賞を果たした田中希実(22)=豊田自動織機=は、800メートル、1500メートル、5000メートルと中長距離では異例の3種目に出場する。1500メートル前日本記録保持者の小林祐梨子さん(33)との対談では、両親との関係性や五輪への思いなどを語った。
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-父の健智コーチとは、意見がぶつかり合うこともあると。
田中希実(以下、田中)「2、3日に1回は絶対修羅場になってます。改まって謝る場はあまりなくて」
小林祐梨子さん(以下、小林)「同じ方向を向いているからね。のんちゃんは言葉がしっかり伝えられる。お互い理解しているからこそ、余計に衝突することがあるのかも。全然違う方向を向いていたらそうはならない」
-母の千洋さんも、北海道マラソンで2度優勝経験がある市民ランナーの実力者。
田中「2人は私がジコチューで腹が立つみたい。話を聞いてほしいって言うと、それならお金を払って聞いてくれるコーチを見つけろって。自分たちはお金の関係じゃなく親子だから、聞きたくなければ聞かないし、機嫌を取ろうとも思わないと言われる」
小林「お父さんには弱音も吐けるし、逃げられるし、妥協もあると思うけど(他人とは違う)厳しさもある。お母さんもそう。結果が出ても『調子に乗っとるわ』とプロ目線。私も母親なのですごく勉強になります。のんちゃんは私の子どもに読み聞かせをしてくれるし、いいお母さんになりそうやね」
田中「今はそもそも出会いの場がないのでイメージがなくて。小学生の時の夢は、母のようにママさんランナーになって長野マラソンとかで優勝して、海外で子どもにお土産を買って帰るということでした。母が米国とかデンマークから雑貨やお菓子を持って帰ってきてくれるのがうれしかった。自分がこんなトップで陸上をやるとは思っていなかったので、今は違う方向性のような気もします」
-世界のトップと戦う舞台が迫っている。
田中「まずは1500メートルから、五輪のように行けるところまで全力投球でやります。決勝に残れたら、後は伸び伸び走るだけ。入賞できたらラッキーと、楽しめる境地になれるかな」
小林「五輪に出て気持ちは変わった?」
田中「一度五輪に出たことで2回目も出たいという気持ちは強くなりました。次はパリだし海外での五輪はどんな感じか知りたい。今回はコロナ禍だったので、通常の盛大な歓迎ムードの中での五輪は楽しいんじゃないかなと思います」
小林「私も現役時代には世界で勝負したいと言ったことがあったけど、それ以上の言葉は出てこなかった。正直、何をしたらいいかわかってなくて。でも、のんちゃんはどうすればその場所に行けるのか、わかっているんやね」