サーフィン・稲葉玲王 13歳でプロテストに合格した才能開花へ「海外のCSで優勝」
昨夏の東京五輪の新種目として脚光を浴びたサーフィンは、パリ五輪でも日本勢のメダル獲得の期待が懸かる。夢舞台まで2年を切った中で、その実力が注目を集めつつあるのが稲葉玲王(25)だ。東京五輪の出場こそかなわなかったが、現在プロ最高峰のチャンピオンシップツアー(CT)に参戦すべく、世界を転戦中。世界で奮闘する25歳を紹介する。
“最悪の出会い”が、“運命の出会い”になった。稲葉がサーフィンを始めたのは6歳の時。千葉県でサーフショップを営む父・康宗さんに連れられたのがきっかけだ。海は自宅から徒歩数分で、水泳教室にも通っていた。ただ、泳ぐことができなかった。
「泳げないし、海も怖い。足がつく所とかでやってるんですけど、泣きながらやっていました」
それでも初期から波の上に立つなど才能はあった。小学2年頃から出始めた大会では、「ぽんぽんと勝てた」と好調。2、3年たって泳げるようになると、「気付いたらはまって、毎日やるようになっていました」とのめり込んだ。
2010年に日本プロサーフィン連盟(JPSA)のプロテストに、当時最年少の13歳で合格。オーストラリアと米ハワイへの留学を経て、13年には世界選手権16歳以下の部で4位に入るなど結果を残してきた。
大きな体から繰り出されるパワーサーフィンとは対象的に、口調は穏やかで、愛嬌(あいきょう)あふれる一面もある。19年ジャパンオープンでは気合を入れるために3時間半かけてパンチパーマをかけたが、父に「怒られました」と振り返る。取材では今でも髪型について聞かれることが人一倍多く、「逆にプレッシャーになっちゃう。でもありがたいです」と笑い飛ばした。
現在はCT参戦を目指してチャレンジャーシリーズ(CS)を転戦中。年間ランキングで上位につければ、来季のCT参戦が見え、パリ五輪出場にも近づく。「今年絶対CTに入るのは目標。後は海外のCSで日本人が優勝とかはなかなかないんで、一つでも優勝したいですね」。サーフィン界の“王”となるべく、挑戦は続く。(デイリースポーツ・田中亜実)
◆稲葉玲王(いなば・れお)1997年3月24日、千葉県一宮町出身。2010年10月にJPSAのプロテストに当時史上最年少の13歳で合格した。13年の世界ジュニア選手権では16歳以下の部で4位。19年はプロ最高峰のCTの予選シリーズ(QS)の年間ランキングで、一時5位に入るなど奮闘した。22年のアジアオープンで優勝。172センチ、70キロ。