未決着の卓球パリ五輪選考基準 日本協会は維持自信「惑わされないで」選手は静観姿勢
日本卓球協会の宮崎義仁専務理事は4日、福岡市で取材に応じ、国内選考会を中心に独自に設定したポイント合計で争う24年パリ五輪代表選考基準について「選び方は変わらない。選手にも『惑わされないで』と伝えた」と、方針維持に自信を見せた。世界ランク各国上位2名にシングルス出場権を与えるとする、国際卓球連盟(ITTF)が発表したパリ五輪予選方式とは見解が異なるため確認を進めているが、まだ正式回答はなく、最終決定には至っていない。今後は国際オリンピック委員会(IOC)と協議する可能性もあるという。
7月にITTFが発表したパリ五輪予選方式は原則、世界ランク順に五輪代表が決まるというものだったが、日本協会がITTFに確認したところ「各国の判断で代表を選んでいい」と口頭で回答を得ているという。ただ、文書での正式発表はないため、ITTFの五輪担当者への確認を続けていたが、宮崎氏は「毎日連絡を取って『約束通りなぜ(正式回答を)出してくれないんですか?』と連絡したら、先日『私からはもう答えません』と返事が来た」と経過を報告。このITTF担当者はIOCに話を通しているといい、今後は日本オリンピック委員会(JOC)を通じて問い合わせる可能性もあるが、宮崎氏は「(卓球の国際統括機関である)ITTFがずっと(日本側の解釈で)OKと言っていたので、(IOCが)考えても変わらない」と自信をのぞかせた。
日本協会は、24年1月の全日本選手権までの選考ポイントで上位2人をシングルス代表に選出した上で、このメンバーを含む日本代表を同年2月の世界選手権団体戦に派遣する方針。五輪予選も兼ねる同大会で出場枠を得た国には五輪シングルス2枠が与えられるため、宮崎専務理事は「枠を取りに行った選手を度外視して(当該選手と異なる場合の)世界ランク1、2番を(五輪代表に)選んだら、選手としてはやってられない。(枠を取った)団体メンバーから(五輪代表を)選ぶのがわれわれにとって常識」と強調。「ITTFは世界ランク上位2名が“望ましい”と(予選方式を)出しているが、2月の世界団体で枠を取った人間から2名を(五輪に)出すのが日本としては望ましい。変わることはありません」と語った。
3、4日にアクシオン福岡で開催された第2回パリ五輪代表選考会「全農カップ・トップ32」の開会式の際には、宮崎専務理事から選手に対して進捗状況を説明したという。「まだ日本協会が決めたやり方か、ITTFが発表したやり方か、どちらになるかわからないという報道があるが、ITTFは“世界ランク1、2位が望ましい”と言っているが、選ぶのはNF(各国卓球協会)だとずっと言ってくれている。一部メディアがどちらになるかわからないと言うから、選手はまた悩んじゃう。なので、選手には悩まなくていいと。ITTFは『各国が選んでいい』と言っているので『選び方に変わりはないですよ』『惑わされないで』と、選手たちに再度伝えました」と明かした。
これを受け、選手は静観する姿勢を示している。
早期決着を切望している伊藤美誠(スターツ)は「早く(最終決定した選考基準を)決めて、それに向けた準備や調整の仕方がそれぞれあると思うので、それをしたいという気持ちがあるが、ここまで決まってなかったらあきらめがつきます(笑)」と現状を受け入れ、「しょうがない部分もあるかもしれないし、複雑な気持ちもあるが、気にしないで。決まったら決まった(時)という気持ちで、あとは自分が今できることをしっかり準備して次の試合に臨みたい」と語った。
3度の五輪出場経験がある石川佳純(全農)は「(日本協会から経過説明は)ありましたけど、文書をまだもらってないということで、別に(状況は)変わってはないのかなという認識」と明かした。「(五輪選考)ルールが変わって選手たちは大変な部分もあるが、やっぱり結果が大事かなと。五輪にしろ世界選手権にしろ結局(その時の選考基準で)勝った人が出ているので。みんな好きなようにプレーしていけば(そのうち)ルールが決まってくると思う」と受け入れつつ、「ただ、後出しは良くない。やっぱりこれを(選考基準に)つけますとか、それは良くないと思いますけど、決まったルールに沿ってやるしかない」と語った。
日本協会としては、現在の選考基準のままで問題がないことをIOCなどから確証を得た上で、23年9月の理事会までに最終決定できればいいとのスケジュール感だという。宮崎専務理事は「(時間的に)余裕はある。次はIOCと交渉していっていいものかをJOCと調整するが、あまり焦らずにゆっくり動きたい」と、時間をかけて理解を得る考えを示した。