パラ女子マラソン道下美里“幻の世界記録” 伴走者が先にゴールで失格も気丈「こういうこともある」

 「東京レガシーハーフマラソン」(16日、国立競技場発着)

 昨夏の東京五輪・パラリンピックの1周年事業として第1回大会が行われ、東京パラ女子マラソン(視覚障害T12)金メダリストの道下美里(三井住友海上)は世界記録を上回る「1時間23分34秒」でゴールしたが、伴走者が先にゴールする違反で失格となり、“幻の世界記録”となった。

 記念すべき第1回大会で、まさかの悲劇が起こった。道下がゴールにさしかかった時、付近は大勢の市民ランナーで混雑していた。ゴールは通常外側レーンからだが、急きょ内側レーンになるという案内が伴走者の志田淳さんには「聞こえなかった」という。そして困惑している間に志田さんが先にゴールしてしまい、フィニッシュ時に電光掲示板が記していた「1時間23分34秒」の世界新記録は幻となった。

 志田さんは「全部私のミス」と猛省。ただゴール位置の説明は事前にはなく「どっちにいっていいか分からない状況だった」とも話した。道下は「こういうこともあります。(志田さんは)悪くない」と責めなかった。

 中継局がYouTubeで公開しているレース映像では、道下がゴールする約5秒前に、急に内側にゴールテープが用意され、道下と志田さんが混乱しながらテープのない外側のコースをゴールする姿が映っていた。動画を見た視聴者からはSNSなどで「最低の運営」と批判の声も上がった。

 この事態に早野忠昭レースディレクターは「原因を究明できてない状況では何も申し上げられない」と説明。その後、大会主催者は「ルールに照らして、公正に判断されたと認識しております」とコメントを発表したが、運営上の問題などへの言及はなかった。

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