「レスリング・全日本女子オープン選手権」（１６日、焼津市総合体育館）

　五輪非実施階級の女子５９キロ級で、五輪２連覇の金城（旧姓川井）梨紗子（２７）＝サントリービバレッジソリューション＝が昨夏の東京五輪以来４３７日ぶりに実戦復帰し、３試合全て無失点の圧勝で優勝した。昨夏に結婚し、今年５月の第１子出産を経て、産後わずか５カ月でカムバック。闘うママレスラーとして出場を目指す２４年パリ五輪に向けて、新たな挑戦が始まった。

　五輪女王の川井が、結婚・出産を経て金城梨紗子としてマットに帰ってきた。「懐かしい。緊張感も久しぶりで終わってみれば楽しかった」。産後５カ月という異例のスピード復帰となったが、ブランクを感じさせない圧倒的な強さで完封Ｖ。マットを降りると、険しい表情を解いてスタンドの家族に手を振った。母初江さんに抱かれたまな娘は、心地よさそうに眠っていた。

　「子供が産まれても、お母さんが頑張っているのを形に残せるのは幸せ」

　昨年８月に結婚し、今年５月に女児を出産。妊娠中、休んだことでレスリング愛が再燃し「緊張感すら恋しくなった」と復帰を決めた。６月末から再開し、夫や母ら周囲のサポートも得て育児と練習の両立を図ってきた。当初、準備運動すらまともにできなかったが、「（出産前と）全く別の人間になったつもりで、また成長している」と新境地だ。

　１２月の全日本選手権からパリ五輪代表選考が本格化する。いばらの道だが、闘う姿が後進へのメッセージにもなる。「対人競技で、出産してこれだけ早く戻ってくることはなかなかない。（出産後も）こういう続け方もあるんだと、見ている子たちが思ってくれたら」。“ママでも金”への第一歩。新たな挑戦に胸が高鳴った。