桐生祥秀 難病から復帰で笑顔の再始動 9秒台の重圧に「気持ちが落ちていくのはあった」

 笑顔で高校生を指導する桐生祥秀(撮影・石井剣太郎)
 陸上競技部の生徒を指導する桐生(右)
 立命館守山高陸上競技部を訪れ指導
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 陸上男子100メートルで9秒98の元日本記録保持者、桐生祥秀(26)=日本生命=が25日、滋賀県の立命館守山高で「カラダを動かす。ココロが羽ばたく。アシックスアスリートスペシャルレッスン」の第1弾として、高校生に陸上教室を行った。6月から長期休養しており、9月末に難病の潰瘍性(かいようせい)大腸炎を患っていたことを公表。この日、4カ月ぶり本格的な再始動となった。イベント後にはデイリースポーツの単独取材に応じた。

   ◇      ◇

 4カ月間のリセット期間を終え、桐生が戻ってきた。高校生に陸上を指導する表情は笑顔があふれた。「家族とのんびりしてたり、先輩に会ったり、ご飯に行ったり。そういう時間でした。すごく充実した時間でした」。初の長期休養で英気を十分に養った。

 9月、衝撃的な告白だった。潰瘍性大腸炎との闘病を自身のYouTubeで明かした。13年に高校3年で10秒01を出して大ブレーク。注目を浴び、日本人初の9秒台への期待は高まった。大会で9秒台を出せない度にため息が聞こえた。それがじわじわと桐生を追い込んでいった。

 「いいこともあったと思うんです。あれ(10秒01)があるから『桐生祥秀』をテレビで特集してもらって。過去の人が(記録を)出してなかったから、陸上が注目されてる部分もあったし、それはありがたかった」

 ただ、タイムでしか評価されなくなっていく自分に葛藤もあった。「毎回(なぜ出せなかったのか)聞かれると自分の中で気持ちが落ちていくのはありました」。

 もがき苦しみ、大学2年で同病気を患った。医者にはストレスが原因と言われたが、16年リオ五輪の400メートルリレーで銀メダルを獲得し、「あれでちょっと救われた」と症状も悪化しなくなった。

 活動は再開したが、今後の予定が決まっていない。「決まったらまた改めてしゃべりたいです」と語る26歳。“ジェット桐生”が再出発を切った。

 ◆潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん) 免疫の異常で自身の大腸を外敵と認識し攻撃。その結果、大腸で炎症を起こし、ただれ、潰瘍を作る。はっきりした原因は分からず、ストレス、遺伝などが関連すると考えられている。血便、下痢、腹痛が主な症状で1日に何度もトイレに駆け込むため私生活に支障が出る。症状が重くなると発熱、体重減少、貧血などを伴う。安倍晋三元首相は同持病のため2度、総理大臣の職を辞した。2007年9月、第1次政権の任期途中で辞任後、同持病を17歳で発症したことを明かした。

 ◆桐生祥秀(きりゅう・よしひで)1995年12月15日、滋賀県彦根市出身。小学校時代はサッカー部に所属。中学進学後に陸上を始める。洛南高3年生時、織田記念陸上で10秒01を記録。東洋大に進学。2015年のテキサス・リレーで追い風参考ながら電気計時で9秒87をマークした。16年リオデジャネイロ五輪400メートルリレーでは第3走として銀メダルを獲得。17年、日本人で初めて9秒台となる9秒98の日本新記録(当時)を樹立。175センチ、70キロ。ニックネームは「ジェット桐生」。

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