フェンシング 江村が貫禄V 世界女王の重圧乗り越える 「第一歩になった」

 「フェンシング・全日本選手権」(5日、LINE CUBE SHIBUYA)

 女子サーブル個人の決勝が行われ、世界選手権で日本勢初の金メダルに輝いた江村美咲(23)=立飛ホールディングス=が、同団体銅の尾崎世梨(法大)を15-8で下し、3大会ぶり3度目の優勝を決めた。

 江村は開始早々に3連続得点を奪うと、一度もリードを許すことなく圧勝した。普段から練習を共にする尾崎は、手の内をお互いが知り尽くしている仲。江村は「迷いながらプレーすることだけは絶対にないようにしよう」と強い気持ちを持って臨んだという。

 日本一が決まると、クールに左手を掲げてガッツポーズ。自己採点は「65点ぐらい」と辛口だったものの、「やっぱり何度立っても緊張する舞台。勝っても負けても胸を張って出し切った試合がしたかった。完璧主義者なので完璧ではないんですけど、今日できることはできたのかな。応援してくれているたくさんの方に支えられて、幸せなフェンシング人生を歩むことができている」と喜びを語った。

 1988年ソウル五輪代表の父・宏二さん、元世界選手権代表の母・孝枝さんを両親に持つフェンシング界のサラブレット。昨夏の東京五輪こそ3回戦敗退となったが、5月のワールドカップで金、イタリアグランプリで銅メダルと大躍進。さらに7月には世界選手権で頂点に立った。

 日本勢初の世界女王となり国内大会では、今まで以上にプレッシャーがかかる。その中で「過ぎたことは捨てて、ふさわしい準備をして挑むことに切り替えた」と江村。「チャンピオンの負けられない気持ち、周りからの期待、勝って当たり前と思われるようになってきた状況で惑わされずに自分の試合をすることが課題。その第一歩になったかな」と精神面での手応えを語った。

 今大会が行われたLINE CUBE SHIBUYAは、普段コンサートホールとして使用されている会場。この日はステージ上にピストが引かれ、ライトアップされた中での試合となった。また9月9日に予選から準決勝を行い、2カ月空けて決勝を実施するという異例のスケジュール。江村はそれまでも前向きに捉え「ステージ上でライトアップされた雰囲気は慣れない。それだけの緊張感は五輪につながっていく。経験は積めるだけ積んでおきたい」と話した。

 今後は11日に開催するワールドカップ(アルジェリア)に向けて、6日の夜に出発する。最終目標は24年パリ五輪の頂点。「個人、団体で金メダル。そのために11月から始まる国際大会で団体戦では金メダルを獲れていないのでみんなで獲得したい。個人戦でも安定したプレーをして、毎試合0からふさわしい準備をしたい」。夢舞台まで残り2年。日本の若きエースが、世界の舞台を経てさらなる成長を遂げる。

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