新谷仁美 2時間19分24秒で日本歴代2位に 日本新まであと12秒と悔し涙のV
「ヒューストン・マラソン」(15日、ヒューストン)
女子で1万メートルとハーフマラソンの日本記録を持つ新谷仁美(34)=積水化学=が日本歴代2位の2時間19分24秒で優勝した。2005年のベルリン・マラソンで野口みずきが樹立した2時間19分12秒の日本記録へ12秒に迫った。19分台は日本女子では18年ぶり4人目。01年の高橋尚子、04年の渋井陽子の記録を上回り、昨年3月の東京でマークした2時間21分17秒の自己ベストも大幅に更新した。
日本歴代2位のタイムにも、新谷はレース後に座り込んでむせび泣いた。「自分を犠牲にしてでも私に懸けてくれた人たちがたくさんいた。私が返せるものは結果しかない」。目標の日本記録まで12秒。申し訳なさが募った。
5度目のフルマラソン。起伏の少ない市街地のコースを、男性のペースメーカーについて進めた。35キロまでは野口の日本記録を上回り、2位に6分以上の大差で優勝した。
キーワードは自分を「見定める力」。前回出場した昨年3月の東京マラソン前は、歴代のエースが月間で1000キロ走り込んできたことに倣い、嫌々ながら走り込んだという。しかし、たびたび体に異変を感じた。
猛特訓は「自分には必要ない。効率が悪い」と決心。今大会前は40キロ走に一度も取り組まず、走る量も月間800キロ強にした。余計な疲労を蓄積せずに本番に臨んだ。
最近のスポーツ界を席巻する岡山のアスリートの代表格が続いた。昨年12月の全国高校駅伝では、男子の倉敷が大会新記録で4年ぶり3度目の優勝。今月の全国高校サッカー選手権決勝では、岡山学芸館が県勢初優勝。全国都道府県対抗女子駅伝は、岡山の3区を務めた鶴山中3年生のドルーリー朱瑛里が17人抜きの区間新記録を樹立。今度は新谷が日本女子歴代2位のタイムを打ち立てた。
来年のパリ五輪は現時点で「出ません。私のスケジュールには入っていません」と言い切る。10月の五輪代表選考会には目もくれず、目指すは9月のベルリン。野口の日本記録が誕生した高速レースで、再び日本女子の歴史に挑む。
◆新谷仁美(にいや・ひとみ)1988年2月26日、岡山県出身。岡山・興譲館高時代に全国高校駅伝1区で3年連続区間賞に輝いた。1万メートルで12年ロンドン五輪9位、13年世界選手権5位。14年に一度引退し18年に復帰。20年にハーフマラソンと1万メートルで日本新記録を打ち立て、21年東京五輪は1万メートルで21位だった。22年世界選手権はマラソンで代表入りしたが、直前に新型コロナに感染して欠場。166センチ。
◆新谷の記録は世界47位相当 世界陸連のサイトによると2時間19分24秒は世界歴代で47位相当だった。野口の日本記録は44位タイ。世界記録はブリジット・コスゲイ(ケニア)が2019年にマークした2時間14分4秒で、上位3人は14分台となっている。