「スケジュール帳は真っ黒に」小平奈緒さん引退から4カ月 大学特任教授など多岐にわたる活躍
デイリースポーツ制定「2022年度ホワイトベア・スポーツ賞」の表彰式が31日、東京・内幸町の日本プレスセンタービルで行われた。2018年平昌五輪で日本女子スピードスケート史上初の金メダルを獲得し、昨年10月に引退した小平奈緒さん(36)と、男子ゴルフツアー史上初めてアマチュア2勝した蟬川泰果(22)=東北福祉大=の2人が受賞。蟬川は海外ツアーの関係で欠席し、同大ゴルフ部監督の阿部靖彦氏(60)が代理で出席した。
引退して4カ月。現役時代と変わらず凜(りん)とした姿で表彰を受けた。小平さんは2009年度に続き2度目の受賞。「前回は女子パシュート(団体追い抜き)、今回は個人でいただいた。長年の競技生活の活動を見てくださってとても光栄。私はとら年で勝手にデイリースポーツ様とご縁を感じております」と笑顔でスピーチした。
圧倒的な金字塔を打ち立てた。五輪に10年バンクーバー大会から4大会連続で出場し、18年平昌大会では500メートルで日本女子史上初の金メダルを獲得。同種目では国内外37連勝と無類の強さを誇った。一方で人間力も高く、19年に地元・長野のリンゴ農家が台風被害を受けた際には、ボランティア活動を行い支援。平昌五輪では自身が金メダルを決めた後に滑走する親友・李相花さん(韓国)が集中できるように、人さし指を口元にあて「シーッ」のポーズで、自身の五輪レコードに沸く会場をしずめた名場面は今でも人々の記憶に刻み込まれている。
現在はスケート教室、全国各地での講演、出身の信州大学での特任教授など多岐にわたって活躍。「競技者として見えてこなかった世界の景色が見えてきている。社会の中で生きていくことに対して学ぶことがすごく多い。知らないことを知ることに感動できることが、自分を向上させてくれる」。競技以外の分野で活躍する人と接する機会も増え「一生懸命やってきた方々の姿勢は私たちと一緒だなと。世界のトップを目指すことと共通している」と刺激的な日々を送っているという。
多忙を極め、12月まで予定は一杯。「スケジュール帳は真っ黒になりつつある」とうれしい悲鳴を上げた。第2のキャリアで見据えるのは「唯一無二の自己表現」。「リンクではラストレースでそれが描けた。ただ次の舞台に移した時に、まだ未来が定まっていない。でも確かに思い描く未来はある」。スピーチの最後には「ホワイトベアは冬眠しない。歩みを止めることなく未来へ進んでいきたい」と言葉をつむいだ小平さん。氷上の女王は新たなステージで探究心を燃やしている。
◆小平 奈緒(こだいら・なお)1986年5月26日、長野県茅野市出身。3歳の時、姉の影響でスケートを始める。長野・伊那西高から信州大。10年バンクーバー大会から4大会連続で五輪出場。日本選手団主将を務めた18年平昌五輪では500メートルで日本女子スピードスケート史上初の金メダルを獲得。1000メートルは銀メダル。同年4月に紫綬褒章を受章。500メートル日本記録保持者。昨年10月の全日本距離別選手権を最後に現役を引退。同11月に信州大の特任教授に就任。165センチ。