国枝慎吾さん「もう十分やりきった」 引退会見で27年間の競技生活に別れ

 車いすテニス男子で21年東京パラリンピックの金メダルなど数々のタイトルを獲得し、1月22日に引退を表明した国枝慎吾さん(38)=ユニクロ=が7日、都内で引退会見を行った。パラリンピックに04年アテネ大会から5大会連続で出場し、金4個を含む単複6個のメダルを獲得。車いす初のプロ選手は、通算28度優勝した四大大会とパラリンピックを全制覇する「生涯ゴールデンスラム」も達成した競技生活に思いをはせ「最高のテニス人生」と振り返った。

 やり残したことは一つもない。車いすテニスを長年にわたってけん引した国枝さんは、東京パラリンピックの金メダル、四大大会の優勝トロフィーを背に「もう十分やり切った。最高のテニス人生」と、晴れやかな表情で27年間の競技生活を振り返った。

 「引退」の二文字が口からこぼれ落ちたのは昨年7月のウィンブルドン。四大大会で唯一残っていた悲願のタイトルを獲得し、「生涯ゴールデンスラム」を達成した。チームで抱き合い、歓喜の中、コートの上での第一声が「あぁ。これで引退だな」。競技者として高みに到達した瞬間だった。

 数々の功績を残したレジェンド。長い競技生活の中で戦ってきたのは「車いすテニスをスポーツとして見られたい」というものだった。04年アテネ大会で金メダルを獲得した当時は「(新聞の)スポーツ欄に載らない時期があった。福祉として社会的意義のあるものとしてメディアを通して伝わってきた」。それでも「一番の集大成」と語る東京パラで再び頂点に立ち、周囲の熱気から“スポーツ”としての昇華を実感。「スポーツとしての反響、手応えがあった出来事」と感慨を込めた。

 セカンドキャリアについては「何となく何をしていきたいのかぼんやりと出てきた。まだ心の中に秘めておきたい」と明言を避けた。座右の銘はラケットにも刻まれている『俺は最強だ』。数々の大会を戦い抜いてきた言葉を胸に、第2のステージへ踏み出した。

 国枝さんは、政府が国民栄誉賞の授与を検討していることを受け、喜びを口にした。3日に直接連絡が入ったといい、受賞となればパラスポーツ界初の快挙。「車いすテニスが本当に評価されて、自分自身が言ってきたことが最大限評価された。大変光栄に感じた」と感慨深げだった。

 ◆国枝慎吾(くにえだ・しんご)1984年2月21日、千葉県出身。9歳の時に脊髄腫瘍を発症し、車いす生活に。母の勧めで11歳の時に車いすテニスを始めた。パラリンピックは5大会連続出場。シングルスは08年北京と12年ロンドン、21年東京で金。ダブルスは04年アテネ金、北京と16年リオデジャネイロで銅。四大大会は通算28勝。06年に初の世界ランク1位となり、09年に車いすテニス選手として日本人初のプロ転向を宣言した。

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