羽生結弦さん 五輪でミスの4回転サルコー完璧着氷 東京Dで3万5000人魅了

 フィギュアスケート男子の2014年ソチ、18年平昌両五輪金メダリストで、プロフィギュアスケーターの羽生結弦さん(28)が総指揮を執る、スケーター史上初の東京ドーム単独公演アイスショー「GIFT」が26日、開催された。チケットは完売で、3万5000人がドームへ集結。映画館でのライブビューイングでも、国内外3万人が同時視聴した。第1部の終盤では、22年北京五輪SPで演じた「序奏とロンド・カプリチオーソ」を舞い、五輪ではミスがあった4回転サルコーを完璧に着氷した。

 3万5000人の拍手が鳴りやむと、聞き慣れたピアノの音色が響いた。第1部の最後、試合さながらの6分間練習を行った羽生さんは、22年北京五輪SPで演じた「序奏とロンド・カプリチオーソ」を披露。五輪では冒頭の4回転サルコーがリンクの穴にはまって1回転に終わったが、今回は美しく着氷した。演技後は右の拳を握りしめ、万感の表情。「努力は報われない」と口にしたあの日から、自らの演技でやっと時計の針を動かした。

 「因縁の(4回転)サルコーです。北京五輪でやりきれなかった思いが強くあったプログラム」と、小さく笑みを浮かべた羽生さんは「このプログラムには『夢をつかみとる』って物語がある」と、選曲理由を説明。あの日、あの溝にはまった瞬間に掌からこぼれ落ちた「夢」を、今度こそつかみ取る-。願いを込めた演技だった。

 スケーター史上初の東京ドーム単独公演を無事完遂。プロジェクションマッピングや、東京フィルハーモニー交響楽団によるオーケストラの生演奏など、さまざまな演出で会場を魅了。羽生さんがスケートと向き合ってきた今まで、そしてこれからの人生を、太陽や月、草木など大自然に例えて表現した。

 スケーターとしては初めて眺めた東京ドームの景色。率直に「平衡感覚はつかみづらかった」と振り返ったが、大歓声に浸り「本当に幸せな経験をさせてもらった」と感慨深げだ。伝説を築き続けてきた希代のスケーターが、また新たな歴史を紡いだ瞬間だった。

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