“表現者羽生結弦”が創りあげた伝説の一夜 テーマはひとり「僕の半生描いた物語」
「GIFT」(26日、東京)
フィギュアスケート男子の2014年ソチ、2018年平昌五輪2連覇王者で、プロフィギュアスケーターの羽生結弦さん(28)が総指揮を執った、スケーター史上初の東京ドーム単独公演アイスショー「GIFT」が26日、開催された。プロジェクションマッピングや、東京フィルハーモニー交響楽団によるオーケストラの生演奏などフィギュアスケートの枠を超えた演出とともに、3時間に迫る公演を完遂。3万5000人の観衆、映画館のライブビューイングで視聴した国内外3万人を魅了した。希代の表現者が、伝説の一夜を創りあげた。
羽生結弦というスケーターの人生が、抱えてきた葛藤が、そして才能が、ドームという空間を支配した。
北京五輪からの時計を動かした第1部から一転、後半の第2部はロックな羽生さんでスタート。「レット・ミー・エンターテイン・ユー」で雰囲気を一変させると、レトロゲームのような演出からAdoの「阿修羅ちゃん」でキレキレダンスを披露。大画面に仮面をつけた羽生さんが降臨してからの「オペラ座の怪人」、しっとりと舞った「いつか終わる夢」と「ノッテ・ステラータ」、アンコールの「春よ、来い」、フィナーレ「SEIMEI」まで、ほぼノンストップで駆け抜けた。
ナレーションはすべて羽生さんの声で、物語は展開されていった。テーマは「ひとり」。自らが人生を通じて、経験してきた孤独、痛み、そして乗り越えた先にあった光を、大空間の中に表現した。「僕の半生を描いたような物語でありつつ、皆さんにとってもきっとこういう経験があるんじゃないかなと思って、つづった物語。少しでも皆さんのひとりという心に贈り物というか、ひとりになった時に帰れる場所を提供できたらなと思って」。羽生結弦にしか紡げない「ギフト」だった。
表現者としての歩みは止めない。震災から12年を迎える地元宮城でのアイスショー「羽生結弦 notte stellata」(3月10~12日)を控える。そして、3月下旬からの「スターズ・オン・アイス」にも全公演に出演を予定している。伝説の一夜を終えてもなお、終わりなき英雄譚が、人々の心を打ち続けていく。