入江陵介 笑顔なき10連覇「このタイムでいいのか」若手台頭求む 33歳ベテラン世界で活躍誓う
「競泳・日本選手権」(5日、東京アクアティクスセンター)
男子100メートル背泳ぎで、東京五輪代表の入江陵介(33)=イトマン東進=が53秒46で男女全種目を通じて歴代最多に並ぶ10連覇を達成した。同200メートルも07年から10連覇を達成しており、背泳ぎ2種目で偉業を成し遂げた。派遣標準記録(53秒74)も突破し、8大会連続となる世界選手権(7月、福岡)の切符も手にした。
偉大な記録にも入江の表情はさえなかった。プールから上がってからも、タイムが映る電光掲示板をじっと見つめる。「びっくりした。今シーズン一番遅い。正直自分にがっかりしている」と激しく肩を落とした。
前半50メートルを25秒71の好タイムで折り返すも、これが誤算。「キャパ以上の速さで入ってしまって、後半にバテてしまった」。ターン後から後続を置き去りにする貫禄のレースにも、反省が口をついた。同時に「このタイムで勝っても若い選手によくない。10連覇できたものの、このタイムでいいのか」と、若手の台頭も強く待ち臨んだ。
16歳で初の代表入りを果たしてから、ここまで日本の背泳ぎをけん引。次第に呼び名はエースからベテランへと変わった。トップを走り続けられる理由は、入江にとって単純明快。「満足することが常にないというか、五輪で金を取ったこともないので」。試合への調整期間を2週間から3週間に増やすなど、年齢を重ねてもトップでいるための工夫を忘れることはなかった。
今大会は200メートル背泳ぎにもエントリー。昨年に日本競泳界初となる五輪5大会連続出場への挑戦を宣言し、パリの前年に8度目の世界舞台に向かう。「ここは通過点。世界で戦うことをもう一度意識したい」。福岡の地で33歳のベテランがまだまだ歴史を刻む。
◆福岡世界選手権への道 個人種目は今大会の決勝で派遣標準記録を突破した上位2位以内が代表に内定する。従来は日本水連が独自に設定する派遣標準記録を用いていたが、今回はそれより遅い世界水連が定める24年パリ五輪の参加標準記録を採用。突破できなかった場合も救済措置で代表に選ぶ可能性がある。メンバーは日本選手権の全競技終了後に開かれる選考委員会によって正式に決定する。世界選手権の五輪実施種目で金メダルを獲得すればパリ五輪代表に内定する。