池江璃花子 笑顔の4冠締め 50自復帰後ベストでV「楽しんだレースができた」

 「競泳・日本選手権」(9日、東京アクアティクスセンター)

 女子50メートル自由形が行われ、21年東京五輪代表の池江璃花子(22)=横浜ゴム=が24秒74の復帰後ベストタイムで優勝を飾った。派遣標準記録(24秒70)は突破できなかったものの、50メートルと100メートルのバタフライ、100メートル自由形に続き4冠を達成。今大会では2種目で6年ぶりの世界選手権(7月、福岡)切符を勝ち取り、「すごくうれしい気持ちでいっぱい」と振り返った。

 もう池江の中に不安はない。今大会2種目目の復帰後ベストタイムをマーク。出場種目全てを制して、2021年東京五輪予選となった日本選手権以来2年ぶりの4冠を達成した。歓声に沸くスタンドに、今大会4度目となった表彰台の頂点から手を振る。その表情からは、笑顔とともに自信が満ちあふれていた。

 「プレッシャーや緊張感はなくて、絶対に優勝できると思っていた。すごく心に余裕があった。本当に楽しんだレースができた」

 わずか50メートルの勝負で底力を見せつけた。持ち前の大きな泳ぎで後続を引き離すと、懸命に腕を回し呼吸はわずか1回。残り20メートルで体半分の差をつけて圧勝した。「復帰後ベストが出たのはうれしいし、24秒台後半は安定して出せるようになっている」と大きくうなずいた。

 現状に向き合い実を結んだ成長だった。白血病復帰直後から課題に挙げてきたスタートの遅れ。自分に合った方法を見つけるべく、毎日必ずスタートの練習に取り組んだ。中学時代から何でも器用にこなし、向上心の塊だった池江にとって毎日同じメニューはもどかしかった。「また一緒だ」と思わず漏らすこともあった。だが代表入りを逃した昨年からは「昔は何も考えなくても速かった」と今の立ち位置を見つめ、課題と向き合った。入水直後にあえて深く潜り、推進力を得る新たなスタイルを習得。この日のレースでも、ライバルから後れを取ることはなかった。

 「何も成長していない。この1年は何だったんだろう」と涙ながらに語った昨年の選考会から1年。「絶対に結果を出さないといけない試合だった。アスリートとしていい立場に戻ってきたな」と言葉からも自信がにじみ出てきた。

 6年ぶりの世界選手権へ。今後はヨーロッパグランプリを経て、海外選手との試合勘を養いつつ大一番へと向かう。白血病発覚直前から行っていない高地合宿にも「もう問題ないと思う。徐々にやっていきたい」と意欲を見せた。「日本で戦うより世界で戦うことが楽しみ。しっかり一からトレーニングを積み重ねたい」。階段を一歩ずつ着実に上る池江が、福岡の地で完全復活を目指す。

 ◆池江璃花子(いけえ・りかこ)2000年7月4日、東京都江戸川区出身。3歳から水泳を始め、五輪初出場となった16年リオデジャネイロ大会では日本選手最多の7種目に出場し、100メートルバタフライで5位入賞を果たした。17年の日本選手権では女子史上初の5冠を達成し、18年の同大会では6つの日本記録を更新。同年のアジア大会では史上初の6冠を達成し、大会最優秀選手に選出された。19年2月に白血病の診断を受けた。20年8月に実戦復帰し、21年の東京五輪には3種目で出場。171センチ。

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