石川佳純 平野早矢香さんの質問に涙 苦しかった東京五輪までの5年 後輩との争い「何事も追い抜かれる時は苦しい」
卓球女子で五輪3大会連続メダルの石川佳純(30)=全農=が18日、都内で引退会見を開いた。黒のジャケット姿で登場した石川は23年間の競技人生を振り返り「自分自身やりきったと思えたからです。今日はとても晴れやかな気持ちです。今日という日を笑顔で迎えられたことをうれしく、ありがたく思います」と晴れやかな表情で語った。
引退を決意した時期については「3月のWTTのシンガポールのワールドツアーが終わった時点で、4月の中国の2大会への出場が決まったんですけど、その時に次の2大会で終わりにしようと決意しました。今年に入ってからは毎試合、これが最後になるかもしれないという気持ちでプレーしてきました」と、振り返った。
「東京五輪が終わった時点で、今までは次の五輪をすぐ口に出して目標にしてきましたが、今回は目の前の1試合1試合というところを目標にしていた。はっきり自分自身もいつが終わりになるのかなと正直わからなくて、その中で5月の世界選手権に出場できないことが決まって、自分としてもいいタイミングなのかなと思いました。そこで現役引退を決意しました」と、明かした。
会見終盤、ロンドン五輪でともにメダルを獲得した平野早矢香さんからの質問には、思わず感情がこみ上げる場面も。答え終わった後には、目元をぬぐった。
最年少で挑んだ12年ロンドン五輪のメダル獲得後、エースとなり、立場が徐々に変化していった。伊藤美誠、平野美宇ら下の世代と争ったリオ五輪から東京五輪の5年間の選考レースへの思いを問われ、こう思いを語った。「3大会メダルが取れたことを、自分自身すごく嬉しく思っている。最初のロンドンで平野さん、福原さんという先輩たちと一緒に取ったメダル。たくさんの素晴らしい先輩たちがいて、その中で学んできたことがたくさんあって、背中をみて、育ってきました。そして今度は素晴らしい後輩たちと一緒に戦って。やはり、何事も追い抜く時はすごく楽しいんですけど、追い抜かれる時は苦しいものもあって、難しい時もあって」と、率直に苦しかった当時の心境を明かし「でもその中で頑張ることをやめずに東京五輪の出場権を得られたことは、自分自身を褒めてもいいのかなと思いますし、自分自身を大きく成長させてもらった貴重な時間だったと思います」と、うなずいた。
そして、23年間戦い抜いた自身への言葉を問われ、「よく頑張ったかな?よく頑張れたかなって、一言言います」と、目に涙を浮かべつつ笑った。
◆石川佳純(いしかわ・かすみ) 1993年2月23日、山口市出身。両親の影響で7歳から卓球を始めた。五輪は12年ロンドン大会で団体銀メダルを獲得し、シングルス4位。16年リオデジャネイロ大会は団体銅メダル。東京五輪では日本選手団の副主将を務め、団体では3大会連続のメダルとなる銀メダルを獲得した。家族は両親と妹。左利き。157センチ、51キロ。