早田ひな 涙の初メダルは銅 世界3位撃破も世界1位の孫穎莎に敗れる 「中国人に勝てた」来夏パリへ風穴
「卓球・世界選手権」(27日、ダーバン)
女子シングルス準決勝で早田ひな(22)=日本生命=は世界ランク1位で東京五輪銀メダルの孫穎莎(中国)に1-4で敗れ、銅メダルだった。この種目の日本勢として1969年大会を制した小和田敏子以来、54年ぶりの決勝進出はならなかった。世界10位の早田は第7日の26日、準々決勝で世界3位の王芸迪(中国)に4-3で競り勝ち、この種目で自身初、日本勢としては2017年大会3位だった平野美宇(木下グループ)以来となるメダル獲得を決めた。
1時間14分の歴史的死闘に決着をつけると、拳を握る早田の目から涙があふれ出た。「思い切ってやるだけだった。ずっと勝てなかったが、シングルスで中国人に勝つことができて本当にうれしい」。五輪より中国勢が多く、レベルが高いとされる世界選手権で快挙となる銅メダルを手にし、日本のエース左腕が大きな風穴をあけた。
1ゲーム11点制の現ルールで、21-19というスコアが早田の執念を物語る。3-3で迎えた最終ゲーム。8-10と最初のマッチポイントを握られてからが真骨頂だった。根気強くラリーをつないでジュースに持ち込み、決勝点だけは譲らない。「最後は気持ちの勝負」。計9度のマッチポイントをしのぎ切ると、最後は強烈なバックハンドで我慢比べを制し、会場は「HINA」コールに包まれた。
21年夏の東京五輪は補欠として帯同。盟友・伊藤美誠から刺激を受け、打倒中国への思いを強くした。パリ五輪代表争いで現在トップを独走しているが「代表になることではなく、五輪で中国選手に勝って金メダルを取ることが目標」と言い切る。女子代表の渡辺武弘監督が「早田選手の頭の中は中国対策しかない。中国に絶対勝てるんだという意識で常に練習している」と脱帽するように、高い目標設定でポテンシャルが開花しつつある。
準決勝は世界1位の孫穎莎と力勝負を演じたが1-4で屈し、うれし涙は一夜で悔し涙に変わった。「上には上がいる。孫選手に勝つには課題を克服しないと追いつかない。まだまだ頂点には程遠い」。今回は届かなかったものの、来夏のパリ決戦へ着実に足がかりをつくった。
◇早田ひな(はやた・ひな)2000年7月7日、北九州市出身。4歳から地元の石田卓球クラブでラケットを握った。幼少期から頭角を現し、小学5年の全国大会で優勝。希望が丘高に進学し、16年オーストラリア・オープンでワールドツアー初制覇。同年12月の世界ジュニア選手権団体戦では同い年の伊藤美誠、平野美宇らと中国を破って優勝した。全日本選手権は20年大会でシングルス初制覇し、23年大会は3冠を達成。左ドライブ型。166センチ。