坂井隆一郎 100メートル号泣初V 「朝原さんも江里口さんも優勝、自分もしたいと」
「陸上・日本選手権」(4日、ヤンマースタジアム長居)
世界選手権(8月、ブダペスト)の代表選考会を兼ねて行われ、男子100メートルは22年世界選手権代表の坂井隆一郎(25)=大阪ガス=が10秒11(向かい風0・2メートル)で初優勝を果たした。柳田大輝(19)=東洋大=が10秒13の自己ベストで2位。2連覇を狙ったサニブラウン・ハキーム(24)=東レ=は左足をつった影響で10秒59となり、8位に終わった。男子110メートル障害は泉谷駿介(23)=住友電工=が今季世界2位の13秒04(向かい風0・9メートル)の日本新記録で3連覇、2位の高山峻野(ゼンリン)とともに世界選手権代表に決まった。
陸上界の新スターは、涙で顔をくしゃくしゃにして喜んだ。「優勝できて、本当に本当にうれしいです」。この日の世界切符獲得とはならなかったが、「大阪で優勝したいと思っていた」と地元でのVに感極まった。
大会最終日の最終種目。会場中が熱視線を送っていた。フライングでやり直しとなった2度目の号砲でも、持ち前のスタートダッシュが光った。序盤からリードすると、柳田の猛追もギリギリでかわした。ゴール直後は「視界に柳田選手が見えて勝ったか分からなかった」と振り返ったが、「(電光掲示板に)自分が出た時はうれしかった」と大きくガッツポーズして喜びを爆発させた。
大会の2、3日前から左アキレス腱(けん)を痛めていて「だましだまし」の状態だった。その逆境を支えたのは冬季練習。「もも上げを最大までやって、きつい状態からダッシュにつなげる」と厳しいメニューに耐えたことで、「地力がついた」とVにつなげた。
大阪ガスからは12年大会の江里口匡史以来の優勝。「朝原(宣治)さんも、江里口さんも優勝していて、自分も優勝したいと思っていた」と先輩の名前を上げて、誇らしげに笑った。
初出場だった昨年の世界選手権は準決勝敗退。今年の世界選手権の参加標準記録10秒00を、期間内に突破した時点で代表切符を獲得できる。「標準を切って選ばれたい」。二度目の大舞台へ、爽やかな新王者の目の奥には闘志が宿っていた。
◆坂井隆一郎(さかい・りゅういちろう)1998年3月14日、大阪府豊中市出身。中学1年で陸上部に入ったことで競技を始めた。大阪高、関大を経て、大阪ガスに所属。22年日本選手権2位で、同年の布勢スプリントで10秒02の自己記録をマークした。同年の世界選手権では準決勝で敗退。171センチ、64キロ。