金城梨紗子、自力での五輪3連覇消滅「後悔ない」東京五輪争った伊調馨の心情重ねる「私が弱いとも思わない」
「レスリング・明治杯全日本選抜選手権」(17日、東京体育館)
世界選手権(9月、ベオグラード)代表選考会を兼ねて行われた。女子57キロ級準決勝で、五輪2連覇の金城梨紗子(旧姓川井、28)=サントリー=は、世界女王の桜井つぐみ(21)=育英大=にテクニカルフォール負けを喫した。自力でのパリ五輪代表入りが消滅したが「私の中でのいっぱいいっぱいはこれだった。後悔はない」とすがすがしく語った。
結婚・出産を経てママとしての五輪出場を目指した金城の挑戦は、21歳の現世界女王にテクニカルフォールを取られて力尽きた。自力での五輪3連覇も消滅したが、「3回目の五輪を目指す人と、1度も出たことがない人の五輪への執着心(の違い)を感じた。(桜井)つぐみちゃんの方が(勝利への)欲が強かった。世代交代というか、日本のレスリング界は明るいなと思う」と若手の台頭を歓迎した。
昨年5月に第一子を出産。育児をしながら競技を続行し、五輪出場が懸かる大一番までたどり着いた。「子供が産まれてから『今日も一生懸命やった』と一日一日過ごして今に至るので、これ以上(の結果)は無かった。もっとできたという感情はない」と胸を張り、「相手のつぐみちゃんの方が強かったが、(伊調)馨さんの言葉じゃないが、私が弱いとも思わない。しっかりやってきたので。若手の勢いとか世代交代とか、(新陳)代謝としては通常のことなのかなと思う」と受け止めた。
東京五輪までは、五輪4連覇の伊調馨と57キロ級の代表を争った。19年7月のプレーオフを制して、大先輩から五輪切符を勝ち取った金城だが、今回は若手に世代交代を突きつけられる形となった。伊調は金城(当時は川井)に敗れた際、「準備してきたので後悔はない。自分が弱かったとは思わない。梨紗子が強かった」とコメントを残したが、4年を経て金城も同じ心情を口にした。
今大会で東京五輪女王の金城、川井友香子、志土地真優の3人の自力でのパリ五輪出場が消滅し、伊調の4連覇や吉田沙保里の3連覇という偉業が改めて浮き彫りになる。金城は「先輩方の連覇は知らない人から見てもすごいことだが、本当のすごみをわかるのは現場でやっている選手たち。特に女子は国内で勝てば五輪に直結するようなものなので。私も2連覇はしているが、(川井)友香子や(志土地)真優も五輪を取ったことにしか分からない重圧、感情を味わっている。みんな(辞めずに)やっているだけですごいと思う」と強調した。