豊昇龍 涙の初Vで大関昇進決めた 叔父の元横綱朝青龍との約束「頼むから今場所優勝してくれ」果たす

 笑顔でパレードに出発する豊昇龍(右)=撮影・佐藤厚
 初優勝の瞬間、感極まる豊昇龍
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 「大相撲名古屋場所・千秋楽」(23日、ドルフィンズアリーナ)

 関脇豊昇龍(24)=立浪=が優勝決定戦の末に涙の初優勝を飾り、大関昇進を決めた。本割で新入幕の伯桜鵬との3敗対決に上手投げで勝利。12勝3敗で並んだ平幕北勝富士との決定戦を押し出しで制すると、土俵上で感極まった。叔父で元横綱朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏(42)と交わした優勝の約束を見事に果たした。番付編成を担当する審判部は、八角理事長(元横綱北勝海)に大関昇進を諮る臨時理事会の招集を要請し、了承された。26日開催の理事会と秋場所(9月10日初日、両国国技館)の番付編成会議を経て「大関豊昇龍」が誕生する。

 勝利の喜びを爆発させた直後、勝負師の表情が見る見る泣き顔になった。豊昇龍は勝ち名乗りを待つ間に目をしかめ、はなをすすり、土俵を下りる瞬間に目を拭った。涙の初優勝。「うれしいっす」。支度部屋での第一声も震えていた。

 堂々と2番を制した。本割では新入幕優勝へ勢いに乗る伯桜鵬をガッチリと受け止め、右上手投げで一蹴。「この若手にここで負けちゃいけない」と貫禄を示すと、12日目に敗れていた北勝富士との決定戦も押しに下がらず、相手のはたきに乗じて一気に出て押し出し。「ここまできたので、やるしかないっていう気持ち」と腹を据えてとりきった。

 6月にモンゴルに帰省した際、叔父である元横綱朝青龍と約束した。「『頼むから今場所優勝してくれ』って言われて『はい、頑張ります』って言ったので。(大関も)『今場所決めて』と強い言葉で言われた。しっかり稽古してやりました」。叔父も大関昇進を決めた名古屋の地。誓いを果たした達成感が、涙となってこぼれた。

 覚悟もあった。叔父は豊昇龍に対して場所中のトレーニングに否定的。左足首捻挫で初場所を1日休場した際は激怒され、豊昇龍は電話で泣いて謝って、継続的なトレーニングを中断していた。しかし、モンゴル帰省中に直談判。トレーニング再開を認めてもらい、今場所に臨んでいた。立浪部屋のフィジカルコーチを務める松原郷士氏(50)は「必要性を感じているのでは。自分の中で相当、覚悟を決めたんだろうなと」と感じとった。

 偉大な叔父に憧れ、常に影響を受ける立場にある豊昇龍。元朝青龍も6月の来日時、奮闘を続ける甥(おい)っ子を「非常にプレッシャーがあるんじゃないかな。それに対して本人も努力して相撲をとってる。今は褒めるべきだよ」と認めていた。

 畏怖する叔父にも、ハッキリと自分の主張を伝えられるようになった。初賜杯、そして大関となって、その背中にも一歩近づく。「本当に相撲をやっていてよかった」。ひと皮むけた24歳の若武者。次はしこ名の昇り龍のように頂点を目指す戦いが始まる。

◆豊昇龍の優勝 関連アラカルト◆

 ★立浪部屋の幕内優勝 1968年3月の若浪以来、2009年11月に元小結旭豊の現師匠が部屋を継承してからは初めて

 ★関脇V 2023年春場所の霧馬山(現大関霧島)以来、平成以降では13回目

 ★モンゴル出身力士のV 朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜、旭天鵬、照ノ冨士、玉鷲、逸ノ城、霧馬山(現霧島)に次いで10人目

 ★叔父-甥での幕内優勝 初代若乃花(花田勝治)の甥である貴乃花(花田光司)、3代目若乃花(花田勝)が達成

◆豊昇龍 智勝(ほうしょうりゅう・ともかつ)

 ★本名 スガラグチャー・ビャンバスレン

 ★生年月日 1999年5月22日

 ★出身地 モンゴル・ウランバートル

 ★スポーツ歴 柔道、サッカー、バスケットボール、バレーボール、レスリング。日体大柏高に留学後にアマチュア相撲

 ★初土俵 2018年1月

 ★しこ名の由来 師匠・立浪親方の現役時代の旭豊から「豊」をもらい、叔父の朝青龍から「しょうりゅう」をつけた。「しょう」は朝青龍の「青」ではなく、昇進するように「昇」をあてた。

 ★目標の力士 元横綱朝青龍

 ★好きな食べ物 肉

 ★ニックネーム ビャンバ

 ★サイズ 身長188センチ、体重142キロ

 ★血液型 AB

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