日体大柏高時代の恩師・永井氏が語る豊昇龍の強さの源“とことんやり切る徹底力”
来日から8年で初優勝と大関の座をつかんだ豊昇龍は、どのように才能を開花させたのか。日体大柏高時代の恩師で、柏相撲少年団代表の永井明慶氏(41)が出会いと成長の過程を明かした。
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豊昇龍、当時のビャンバスレン少年が目を引いたのは、まず見た目だった。「そり込みは入っているわ、本当に一匹狼みたいな感じ」と永井氏は苦笑する。元朝青龍が窓口となって開催された、留学生を選抜するモンゴルでの面接会場。衝撃的な出会いだった。
体重は60キロ台前半でも素質はピカイチ。バク転、バク宙を軽々とこなし「身体能力はズバ抜けていた。すごかった」(永井氏)。現十両の欧勝馬、現三段目の朝白龍とともに来日が決まった。
最初はレスリング部。来日2カ月弱の校外学習で運命が変わった。2015年の大相撲夏場所を観戦。横綱日馬富士が敗れて座布団が乱れ飛ぶ光景に「叔父さんはこんな世界で活躍していたんだ」と感動して、相撲への転向を決意。永井氏は「翻訳アプリみたいなのを使って言いにきた。自分なりに一生懸命言葉を覚えて『すもう、やりたい』って」と懐かしんだ。
直後には相撲部に転部。弱音を吐かずに稽古をこなし、すぐに頭角を現した。9月にはインターハイ3位のメンバーにも勝つように。「おじさんと似ているのは、決めたことをやり切ること。今日は誰に勝つまでやめないとか。あと、基礎を何でやらなきゃいけないのかを聞いてきたのは、あの子だけだった」(永井氏)。負けん気と納得したことはとことんやり切る徹底力が、強さの源にあった。
いまや角界の看板力士となった教え子。永井氏は「細い体の頃から見てきて、一つの夢を実現してくれた。子供たちの憧れ、さらに新しい希望を与えてくれる力士になってほしい」と一層の飛躍を願った。(デイリースポーツ・藤田昌央)