柔道パリ五輪内定の橋本壮市、代表選考に異例の疑義「みんな納得できてない」落選選手らの不満代弁
柔道男子73キロ級で来夏のパリ五輪代表に内定した橋本壮市(パーク24)が24日、東京・講道館で取材に応じた。32歳で初の五輪切符をつかみ取り「うれしいと同時に、諦めなければチャンスは来るんだなと実感した」と感慨深げ。内定翌日のこの日に誕生日を迎え、来夏は日本男子史上最年長での五輪出場となる。17年世界選手権など数々のタイトルを手にしてきたものの、長年ライバルだった五輪2連覇の大野将平(旭化成)の陰に隠れてきた苦労人は「最も自分らしい姿で堂々と試合してきたい」と抱負を述べた。
一方、23日に行われた強化委員会では、代表選考で重要な位置づけだった今月上旬のマスターズ大会(ブダペスト)を欠場した選手や、優勝を逃した選手にも内定が出るなど一気に6階級で代表が決まり、X(旧ツイッター)で疑問を投げかける選手も一部見られた。
この状況に32歳のベテランは、自身も東京五輪代表争いで惜しくも落選し、一時は引退も考えた経験を持つだけに「やっぱり落選した選手も気持ちもすごくわかる。(今回は)ピンとこない発表だったと、(代表候補の)選手も思っていると思うんですよ。みんな納得できてないというか、もっと違う選択もあったのではないか」と、必死に戦ってきた選手側にくすぶる不満を代弁した。
全日本柔道連盟(全柔連)は来夏のパリ五輪に向けて、1番手と2番手に明らかな差があると判断した階級について、早期の代表決定を可能とする選考方法を採用した。5月の世界選手権で優勝した阿部一二三(パーク24)ら4選手が6月に内定。さらに今月のマスターズ大会を経た23日の強化委員会で、男子は橋本、81キロ級の永瀬貴規(旭化成)、90キロ級の村尾三四郎(JESグループ)、100キロ超級の斉藤立(国士舘大)、女子57キロ級の舟久保遥香(三井住友海上)、78キロ超級の素根輝(パーク24)が追加で内定となった。早期に代表を決めれば五輪本番に向けた準備期間を設けられる一方、他の候補選手の飛躍の可能性は閉ざされるだけに、一部の階級では「このタイミングで決めるのは早いのではないか」と異論を唱える強化委員もいたことから、男子81キロ級、100キロ超級は決議を取り、賛成多数で内定となった。
橋本自身は代表候補1番手として、故障も抱える中で今回マスターズ大会に出場し、きっちりと優勝を果たして文句なく内定を得ただけに「(他階級を参照すれば)出なくても選ばれていたじゃんと思っちゃうし、色々思うことはある。(問題意識を)皆さんに伝えたいなと思って、今言わせてもらってます」と思いを告白。自身は代表に選ばれている中での異例の問題提起に「僕にメリットは何もないですもんね」と笑いつつ、落選した選手や選考が続く選手の心情をおもんぱかり、強化サイドへの丁寧な説明を求めた。
現時点で代表が決まっていない残り4階級については、12月のグランドスラム東京大会(東京体育館)を経て、年内にも決まる見通しとなっている。