田中希実 日本新で5000m決勝進出 ケニア合宿成果「不安があっても無意識に脚が動く」
「陸上・世界選手権」(23日、ブダペスト)
女子5000メートル予選で田中希実(23)=ニューバランス=が14分37秒98の日本新記録をマークし、2組6着で26日の決勝に進んだ。広中璃梨佳(日本郵政グループ)が2021年に記録した14分52秒84を14秒86も更新した。広中は15分11秒16の1組12着、山本有真(積水化学)は16分5秒57の1組20着で落選。女子三段跳びの日本勢は予選落ち。森本麻里子(内田建設)は13メートル64のA組15位、高島真織子(九電工)は13メートル34のB組17位だった。
最後までアフリカ勢に追いすがった。田中は世界記録を持つキピエゴン(ケニア)らとスタートから集団を形成。振り落とされる怖さもあったというが「実際にケニアに行ったからこそ、不安があっても無意識に脚が動く状態をつくれた」。6着に入り、日本記録を約15秒縮める激走だった。
昨年10月、日本女子中長距離界のエースは「世界のトップと戦えるタフさを身に付けたい」と大きな決断を下した。女子では異例のケニアへ向かい、現地チームの練習に参加。今年6月には別チームの合宿へ。「精神面が鍛えられる」マラソン選手のメニューもこなし、たくましさが増した。
高校時代、父の健智さんから渡された「ケニア!彼らはなぜ速いのか」というタイトルの本を読んだのが興味を抱いたきっかけ。昨年の世界選手権で不本意な成績に終わり、殻を破るために足を運ぶ決意を固めた。
健智コーチは「『そんなところまで行かなくても』といろんな人に言われたが、行くべきだった。世界基準で戦える感覚が得られた」と評価。本人も「世界陸上がケニアでの経験を一番実らせたい大会」と力説する。過去にないほどの手応えをつかみ、この種目3度目の決勝へ向かう。
◆田中希実(たなか・のぞみ)1999年9月4日生まれ。兵庫県小野市出身。西脇工高から同大。18年世界ジュニア選手権3000メートルで金メダル。東京五輪の1500メートルは日本人初の決勝進出で8位入賞。今季の日本選手権は1500メートルで4連覇、5000メートルで2連覇を達成。1000メートル、1500メートル、3000メートル、5000メートルの日本記録を保持。父はコーチも務める健智さん、母は97、03年の北海道マラソンを優勝した千洋さん。ニューバランス所属。153センチ。