転機にしたかった松島のビッグゲイン サモア戦へ修正したいハイボールキャッチとラインアウト 伊藤鐘史氏の分析

 ボールを運ぶ日本代表のレメキ(右から2人目)=日本ラグビー協会提供
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 「ラグビー・W杯・1次リーグD組、イングランド代表34-12日本代表」(17日、ニース)

 日本は後半、1点差に詰め寄ったものの突き放され、計4トライを奪われて通算1勝1敗となった。勝ち点は5のままで、イングランドとの対戦成績は11戦全敗。次戦は28日(日本時間29日)にサモアと対戦する。2015年W杯イングランド大会日本代表で、リーグワン・三重ホンダヒートFWコーチの伊藤鐘史氏(42)がイングランド戦を分析し、サモア戦のポイントを語った。

 ◇  ◇  ◇

 拮抗した試合では、少ないチャンスをいかに得点につなげるかに尽きる。それを実行したのがイングランドだった。十分対抗はできたが、最終的には相手が上手で、終盤のトライを見ていても勝負どころでの集中力を感じた。

 日本に勝つ流れがあったとするなら、後半17分に松島が自陣22メートルのターンオーバーアタックから、敵陣10メートルまでビッグゲインした場面。ライリーもゲインして、最後はバルがノックオンしてしまったが、ここで得点しなければいけなかった。転機であり、つなげると流れがきただろう。

 テンポ良く、いいアタックができていたと思うが、ハンドリングのエラー。相手のアタックと比較すると、終盤のゴール前のアタックでもハンドリングエラーなく取り切ったのがイングランド。付け入る隙があったならあそこで、全体の流れを見ると大きなポイントだった。

 直前に奪われたトライはアンラッキーだったが、もう一つ気になったのは、前半の最後に2回続けてペナルティーをしたところだ。一つ目がモールディフェンスでのペナルティー。相手が5メートルまで迫って、モールを選ばずにノックオンしてくれたので良かったと思ったが、蹴り出した後の相手のアタックで、オフサイドした。疲れた中でのプレーの精度は、日本が絶対に相手を上回らないといけない。プレーの精度や規律が乱れた、もったいない3点だった。

 ラインアウトについても、要所要所でミスが多くなった。中盤までは頑張ったものの、途中から入ってきたディアンズをもっと生かすべきだった。高さで世界に対抗できる選手だし、彼もラインアウトに自信を持っている。特に終盤でミスが続いた。

 もう一つ修正すべき点が、コンテストキックでのハイボールキャッチだ。前半クリーンキャッチできたのはゼロ。後半の序盤はクリーンキャッチできたように見えたが、相手のキックが少し深くに落ちるようになり、精度が悪くなった。いいところに落とされたキャッチとしては、クリーンにできたところがあまり見えなかった。ハイボールキャッチ、ラインアウトの2点はサモア戦への課題だ。

 スクラムは本当によく頑張ったと思う。先発メンバーが押す場面も見られたし、後半交代していく中で、どの選手が出ても対応できていた。イーブンに組めていた。最後の方で疲れが出たが、全体を見ると健闘した。

 フェーズを重ねて前へアタックしながら、裏のスペースにキックを落とす形でテリトリーを取ったり、プレッシャーをかけるシーンが何度も見られた。サモア戦へ向けては、基本的にはこの考え方でいいと思う。相手をどんどん押し下げて、ラインディフェンスの圧力がかかった状態で裏にスペースができるので、そこに蹴って背走させる。相手を消耗させていく考え方でいい。ラインアウトのキャッチと、コンテストキックでのハイボールキャッチの精度が伴ってくれば、もっと安定度が上がる。そうすれば勝機は十分ある。

 2015年大会は、初戦で南アフリカに勝って、2戦目でスコットランドに負けた。あのとき、チームで話したのは精神面だった。そもそも自分たちの目的はベスト8に入ることで、南アフリカに勝つためだけに来たのではないことを再確認した。スコットランドに負けた後、チームは締まった形になり、2連勝につながった。

 この一戦を落としたことはすごく残念だが、まずはトーナメントに行くこと。後はないが、アルゼンチンとサモアを含めた3チームで2位争いをする形になると考えると、残り2戦必勝なら、チャンスは十分ある。サモアに必ず勝って、アルゼンチンとのラストゲームにつなげることだ。

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