【記者コラム】ファンと一緒に築く「卓球王国」 会場は平日でも満員、大声援で後押し
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【杭州】卓球担当に就いてから約1年9カ月、杭州アジア大会で初めて「卓球王国」の中国で取材する機会に恵まれた。次々と世界トップクラスの選手を輩出する強化体制はもちろん、目の肥えた熱心な観客も強豪国の土台になっていると実感した。(共同通信・大島優迪)
競技が始まった9月22日。平日にもかかわらず、約6800人収容の会場は午前10時開始の第1試合から老若男女で、ほぼ満員となった。 日本男子の張本智和(智和企画)は「すごくモチベーションが高まるし、すごくいい雰囲気で試合ができた」と素直に喜んだ。 中国チームが入場した際には大歓声が上がった。自国選手を後押しするのは「加油(頑張れ)」の合唱。特定の応援団がいるわけではなく、プレーが途切れた際、選手の名前を呼ぶかけ声とともに自然発生する。 直径40ミリ、重さ2・7グラムのボールを扱い、繊細な技術が求められる卓球は「打球音」も球質を見極める大事な要素となる。多くの選手がサーブを打つ際に足で地面を強く踏んで音を出すのは、そうした理由もある。 中国選手の試合中、別のコートでプレーしていた吉村真晴(TEAM MAHARU)は「観客の皆さんの『加油』が、すごく大きくて。ラリー中にボールの音が聞こえない時もある。ボールの音で球質を判断することがあるので、速い球なのか、遅い球なのか、回転がかかってるのか、判断の難しさがある」と苦笑いを浮かべていた。 地元ファンが声援を送るのは中国選手だけではない。同じ日の午後、センターコートで試合が行われたのは女子団体の台湾と北朝鮮のカード。 外交では中国が台湾への軍事圧力を強めて地域の緊張感が高まっているが、台湾の選手の好プレーにも自然と沸いた。北朝鮮が3-2で競り勝った3時間超の熱戦が終わると会場が拍手に包まれた。
2019年に自転車BMXの取材で中国・成都を訪れた際も、卓球の試合が当然のようにテレビで放送されていた。大会規模は今回と異なるが、国内では全日本選手権やTリーグの観客動員が課題となっている。
育成や普及、認知拡大や新規ファンの獲得-。「打倒中国」を目指す日本は、コート外でも取り組むべき課題がありそうだ。