【記者コラム】26年愛知・名古屋アジア大会は長良川で開会式? 中国・杭州で、大規模スポーツ大会の未来を考えた

 【杭州】中国で開催されている杭州アジア大会が、各方面から絶賛されている。主催するアジア・オリンピック評議会(OCA)のシン会長代行は「大会の水準を引き上げた。運営やインフラが素晴らしい」と持ち上げ、国際近代五種連合(UIPM)のショーマン会長は「準備も含めて完璧だ」と手放しで褒める。しかし、選手村や12の競技会場を新設した巨大な規模の大会には「中国でしかできない」との指摘も聞こえてくる。記者が準備状況を取材している2024年夏のパリ五輪など、最近はコスト削減を重視する傾向があるだけに、杭州は「異世界」に来た感覚だ。(共同通信・吉田学史)

 立派なスタジアムに、食事や住環境に優れた選手村、いつも爽やかな笑顔で迎えてくれるボランティア、充実した輸送-。杭州のおもてなしは、確かに「完璧」との評価を受けるのもうなずける。マンパワーも資金力も豊富な中国が、国の威信を懸けた時のすさまじさを実感した。

 一方で、国際オリンピック委員会(IOC)や2021年の東京五輪・パラリンピックが目指した「持続可能な大会」とは一線を画す。五輪招致を巡っては近年、財政的な負担を理由に欧州で撤退する都市が相次いだ。

 血税が投入される巨大イベントに対する市民の目は厳しさを増している。開幕まで1年を切ったパリ五輪も、95%の会場が既存、または仮設であることをしきりにアピールしている。

 注目の開会式も、メインスタジアムでのど派手な演出ではなく、市の中心部を流れるセーヌ川で行う。世界的に知られたエッフェル塔やコンコルド広場といった観光名所や、その近くに仮設の施設を整備することで独自性を打ち出す。IOCのバッハ会長の言う「新時代の五輪」の形だ。

 それとは対照的な杭州を引き合いに、ある国際競技連盟(IF)幹部は国際総合大会の在り方について「今が分かれ目だ」と分析する。そのただ中で2026年に共催を控える愛知県と名古屋市は、旧来型のアジア大会が抱える、良さとリスクの両面を冷静に見極める必要があるだろう。

 欧州出身のあるIF事務総長は「日本独自のやり方で行うべきだ。中国と競うのは厳しい。日本の伝統を打ち出すような方式でも人々は喜ぶと思う」と提言した。他の関係者からは「開会式を長良川でやったらいいんじゃないか」との意見もあった。

 予算やマンパワーに限りがある将来の大会組織委員会に求められるのは、創意工夫。愛知・名古屋大会は、これからの3年間でどのような「アジア版オリンピック」をつくり上げるのか、注視していきたい。

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