【記者コラム】12歳でマレーシア留学したスカッシュ界のスター候補、渡辺聡美 日本初のアジア大会「銅」、28年ロス五輪で初採用か

 【杭州】中国・杭州が舞台の夏季アジア大会は40競技で熱戦が繰り広げられ、五輪では見られないスポーツも行われた。世界で約2千万人の競技人口を誇る英国発祥のスカッシュもその一つ。2028年ロサンゼルス五輪で追加競技の候補に挙がる。女子で24歳の渡辺聡美(Greetings)はシングルスで日本勢初の銅メダルに輝き、日本のスカッシュ界をリードするエースとして存在感を示した。(共同通信・松下裕一)

 10月4日の女子シングルス準決勝は、今大会の金メダルに輝いたマレーシア選手との対戦だった。ジュニア時代から何度も顔を合わせ「勝率は1割。全然勝てない相手で、いつも彼女の方がちょっと先にいる感じ」と苦手意識を持っている宿敵だ。序盤から相手のペースを崩せず、第1、2ゲームを8-11で落とした。

 第3ゲームも一方的に点を奪われてストレート負け。「メダルを取るのは大前提で、一番上に立つ」という目標はかなわなかった。メダルなしに終わった団体戦を含めて「どちらも今回は届かずに、悔しい大会になった」と涙が頬を伝った。

 幼い頃から水泳や体操、バレエなどさまざまなスポーツに取り組んだ。スカッシュと出会ったのは8歳。それまで道具を使った競技をやったことがなく、友人の母親に勧められたのがきっかけだった。

 四方の壁を使ってゴム製のボールをワンバウンド以内に打ち合い、3ゲームを先取すれば勝ちというルール。テニスやバドミントンから転向する選手が多いそうで「最初からスカッシュしかやったことがなく、結構レアなケース」と振り返る。

 12歳になると強豪国マレーシアへのスカッシュ留学を決めた。マレーシア人コーチの家にホームステイし、最初は慣れない英語に四苦八苦した。

 朝4時に起床し、洗濯をしてから学校に通う日々。異国で5年間過ごしたことで「基礎的な部分はすごく培えた」と技術が磨かれた。

 大学は競技発祥国の英国に進んだ。「今後しっかり英語を使っていけるようにしたい。(スカッシュと語学の)両方できるからいい」という理由で選んだ。

 専攻はスポーツ科学で、授業は週に3日。その他の日は午前と午後に分けてトレーニングに励み、1~2カ月に1度は大会を転戦している。

 英国や、スカッシュが国技とも言われるエジプトでは「ジュニア世代が携われる環境がすごく多くて、学校の授業の一環になったりしている」という充実ぶり。

 一方、日本はスポーツクラブの中に設けられている施設が大半だ。高校生以上の年齢制限を設けている所や、プレーするためにはスクールに所属する必要があるなど、競技に触れるためのハードルが高い。「もっと小学生以下でも気軽にやれるような施設が増えるといい」と普及を願っている。

 全日本選手権を5連覇中で、2022年12月の世界選手権団体戦では最優秀選手(MVP)に選ばれたスター候補。

 日本では押しも押されもせぬトップ選手だが「世界一を取っているわけではない。そこはおごらず、上には上がいる」との初心は忘れていない。

 2023年4月に世界ランキングでトップ20に入り、上位勢の背中が少しずつ近づいてきた。「昔は世界1位とか平気で言っていた。次はトップ10を目指し、引退までにはトップ3に食い込みたい。世界一という夢は諦めずに積み重ねていきたい」と一歩ずつ頂に向かう。

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