霧島2度目V 来場所綱取りだ 目指すは師匠最後の場所・春場所で新横綱霧島披露
「大相撲九州場所・千秋楽」(26日、福岡国際センター)
大関霧島が13勝2敗で4場所ぶり2度目の優勝を果たした。平幕熱海富士が4敗目を喫して優勝が決定後、結びの一番で大関貴景勝を突き落として有終の美を飾った。来年定年する師匠の陸奥親方(元大関霧島)にとって最後の地元九州場所で大関初優勝。来年初場所で綱とりに挑む。陸奥親方は自身が果たせなかった「大関霧島」としての九州場所制覇を達成したまな弟子に喜びをにじませた。
福岡のファンから降り注ぐ祝福は温かかった。土俵下で両手を広げて応える霧島に、晴れやかな笑みが広がった。鹿児島県霧島市出身の師匠にとって最後の九州場所で、まな弟子が「大関霧島」としての優勝を贈った。
「霧島という素晴らしい名前をいただいたので、優勝したい気持ちはあった。九州に入ったら、いろんな人から『親方最後だから頑張ってくれ』と。優勝してよかった」。期待に応えた安どと喜びがあふれた。
自身の取組前に、目の前で熱海富士が琴ノ若に敗れて優勝が決定。視線を落とし、こみ上げるうれしさは「結構我慢した」と、苦笑まじりに振り返った。それでも集中を切らさず、結びの一番では貴景勝をタイミングよく突き落とし。自身初の13勝目で華を添えた。
飛躍の一年だった。春場所で初優勝し、夏場所後に大関昇進。憧れの師匠のしこ名を受け継いだ。名古屋場所はケガで途中出場して負け越し、秋場所はかど番と苦しみも味わったが、一年納めの場所できっちりと結果を出し、年間最多勝も達成した。支度部屋での記念撮影では、ホラン夫人と3歳の長女もお披露目。まな娘から祝福のキスを受け「すばらしい1年になった」と満足感を漂わせた。
自身が果たせなかった霧島としての九州での優勝を弟子が目前にしていたこの日の朝。陸奥親方は「何かあるのかなと思いますよね」と、不思議な巡り合わせに感慨を隠せずに話していた。取組は役員室のテレビで観戦。優勝を見届けると「あっぱれ。いい親孝行。大したもの」と笑顔でほめたたえた。
次は綱とりだ。来年の初場所を制すれば、師匠の最後の場所となる春場所で新横綱霧島としての姿を披露することができる。「そうなったら感無量。その名前でもう一つ上にいってくれたら、こんなにうれしいことはない」と話していた陸奥親方は「相当稽古をやらないとね」とさらなる精進を求めた。
もちろん、霧島もそれは百も承知。「いつも通り。稽古しかないので。自分のできることを全部頑張るしかない」と力を込めた。尊敬する師匠も届かなかった頂点へ、しこ名とともに受け継いだ魂をかけて挑む。
◆霧島鉄力(きりしま・てつお 本名ビャンブチュルン・ハグワスレン)1996年4月24日生まれ。モンゴル・ドルノド県出身。高校卒業後、陸奥部屋の後援者を通じてスカウトされて19歳で来日。2015年夏場所で初土俵を踏み、19年春場所で新十両。20年初場所で新入幕。今年の春場所で初優勝。敢闘賞1回、技能賞3回。186センチ、145キロ。得意は左四つ、寄り、投げ。ニックネームはハグワ。家族はホラン夫人と1女。