高校スポーツ「少子化」の壁 歴史を開いた花園初合同チーム「若狭東・敦賀工」 競技の“特性”見極め柔軟な対応必要
高校スポーツの全国大会が年末年始にクライマックスを迎えた。取材現場の舞台裏を描く新企画「記者が見た スポットライトの裏側」。今回は、少子化や部員不足に直面する競技のさまざまな取り組みに着目する。桐蔭学園(神奈川)の優勝で幕を閉じた第103回全国高校ラグビー大会で、若狭東・敦賀工(福井)は合同チーム初の花園出場という1つのエポックを築いた。少ない部員で全国大会を目指すチームの道しるべとなるだろうか。
花園初の合同チームだった若狭東・敦賀工は1回戦で目黒学院(東京第2)に敗れたが、部員不足に悩むチームの代表として歴史を刻んだ。公式戦出場に最低15人が必要な競技で、地方には部員集めに苦慮するチームが多い。若狭東は新チーム結成時は15人に満たず、部員3人の敦賀工と合同チームを組んだ。昨年4月に新入生8人が入部し単独で22人になったが、半年間ともに練習したつながりは固く、今大会も合同チームを継続した。
初戦で目黒学院に7-62で敗れたが、朽木雅文監督(51)は「これ(合同チーム)が普通になれば、大会に出るチームも増えると思う」と花園に出場できたことに意義を感じていた。少子化の影響を受け、2000年度から合同チームの参加が認められた。現在ほとんどの都道府県大会に合同チームが名を連ねる。一方で単独出場の可能性を模索する学校もある。
部員15人で同校初の初戦突破を果たした高松北は、香川県教育委員会が21年度から開始した「せとうち留学制度」で部員を募集。ラグビーだけでなく特色ある学科や部活動を希望する生徒に同県内への進学を認める制度で、今大会は15人中6人が同制度の県外留学生だ。さらに3年生の元野球部員4人を加え、ぎりぎりの人数をそろえて大会に参加した。
高木智監督(57)は「強豪校は部員数100人超だが、高松北に来ればレギュラーで花園に出るチャンスがある」とバックアップに感謝。故障者が出て出場可能選手が14人となり2回戦は棄権したが、部員不足を解消する上で一つの可能性を開いたといえるだろう。
他の競技も時代とともに少子化対策が進んできた。日本高等学校野球連盟では、統廃合を控える学校を対象とした「連合チーム」制度を97年にスタートさせた。12年夏からは部員不足(8人以下)の学校同士が集まることも認められた。連合チームの甲子園出場はまだ実現していないが、21年センバツでは北信越地区推薦校として富山北部・水橋(富山)が選考委員会にかけられた。
全国高校駅伝も参加校はピーク時に比べ半減した。男子は85年に2205校だったが23年は1060校。女子は91年の1344校が23年は713校だった。大会実行委員会によると、個人の実力が成績に反映されやすい競技の特性上、合同チームの出場を認める方針はないという。救済措置として24年からは全国大会出場校を47都道府県代表に地区大会代表11校を加えた計58校とし、出場機会を広く与えることになった。
少子化対策は正解のない課題。競技の特性を見極めながら柔軟な対応が必要だ。大会は部活動の集大成。常にアスリートファーストであってほしい。(デイリースポーツ・中野裕美子)