照ノ富士 宇良を極めて189日ぶり星 強烈小手投げに場内悲鳴「まだ本気出せば折れていた」
「大相撲初場所・初日」(14日、両国国技館)
腰痛などで3場所連続休場明けとなった横綱照ノ富士(32)=伊勢ケ浜=が新小結宇良(木瀬)を押し出し、白星スタートを切った。極めた相手の腕が折れんばかりの力強い内容で、復活への一歩を刻んだ。先場所を制して綱とりがかかる大関霧島(陸奥)は若元春(荒汐)を退けた。貴景勝(常盤山)と豊昇龍(立浪)の両大関も勝ち、1横綱3大関が白星そろいぶみ。大関とりに挑む関脇琴ノ若(佐渡ケ嶽)は阿炎(錣山)に快勝した。
横綱の力をまざまざと見せつけた。照ノ富士は左で抱えて前に出ると、宇良の右腕をガッチリと“捕獲”。すぐさま強烈な小手投げでぶん回した。相手の右肘がグニャリと曲がった衝撃の光景に、館内にどよめきと悲鳴が。1回転したところでハンマー投げのように腕を放すと、バランスを崩した宇良が土俵下へ飛んでいった。
昨年名古屋場所初日以来189日ぶりの白星は、不安を吹き飛ばす圧巻の内容。涼しい顔で引き揚げてきた支度部屋では「(宇良は)止まっても力が強い。じっくりいこうと」と狙いを明かし、腕が極まった瞬間について「まだ本気を出せば折れていたと思う」とさらりと言った。
腰の痛みは表に出さない。出番を待つ支度部屋では、霧島とにこやかに談笑。付け人の力いっぱいの押しを受け止め、腕立て伏せやダンベルでもしっかり体を温めると、結び前の霧島より先に出て花道で待った。揺るぎない精神力。「何も変わったことはないですね」。復帰の土俵と白星も淡々と受け止めた。
八角理事長(元横綱北勝海)は「相手の動きを止めて、自分の動きにした。これがあるから強いな」と解説。来場した横綱審議委員会の山内昌之委員長は「安心した。強いなと。出場したことで一つの関門をクリアした」と感嘆した。
久々に浴びた大声援。照ノ富士は「土俵で戦っている姿を見せたい思いで、必死に生活していた。いい結果を見せられたと思います」とうなずいた。綱とり&大関とりと、見どころも豊富な新しい年の幕開け。その壁となる存在が戻って来た。