石川1区・五島莉乃 被災地に勇気届けた 魂の走りで涙の区間賞「私たちの走り届いていたらうれしい」

 1区をトップで走った石川・五島莉乃は2区の猿見田裕香(左)にたすきを渡す(撮影・山口登)
 1区の区間賞に輝いた石川・五島莉乃(右は2区の兵庫・田中希実)
 募金箱の設置に感謝を伝えた五島
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 「全国都道府県対抗女子駅伝」(14日、たけびしスタジアム京都発着)

 能登半島地震で大きな被害を受けた石川県が懸命の走りを見せた。1区(6キロ)でエースの五島(ごしま)莉乃(26)=資生堂=が18分49秒で区間賞を獲得。序盤で飛び出し、広中璃梨佳(長崎・日本郵政グループ)の持つ区間記録に10秒に迫る快走で、2位に35秒差をつけてたすきを渡した。沿道からの励ましの声援も受け、涙を見せた「魂の走り」で被災地に勇気と希望を与えた。

 沿道の大声援に押されるように、自然と足が動いていた。「石川!」「石川!」-。1区の1キロ手前から独走状態に入った五島の目頭は、次第に熱くなっていた。

 「今まで聞いたことがないぐらい、ずっと絶えずに応援してくださっていて。私も勇気をもらって、泣きそうになりながら走っていました」。2位に35秒差をつける圧巻の区間賞。世界選手権に2度出場したエースは「石川県の皆さんに少しでも私たちの走りが届いていたらうれしい」と涙を流した。

 元日の能登半島地震で石川県が被災。金沢市出身の五島は、石川から東京へ向かう新幹線に乗ったばかりだった。大きな揺れに「帰れへんのかな」と動揺した。家族の無事は確認できたが、車内で12時間過ごし、帰宅できたのは2日の夜。その後も報道を見ては「亡くなられた方もいますし、見る度に心が苦しくなった」と戸惑った。

 12日、宿舎に集まった全員で互いの状況と思いを報告し合った。調整が十分ではない中、少しでも被災地の力になりたいと、掲げたテーマは『笑顔でゴールまで戦う』-。走りで苦しくなっても、笑顔でたすきをつなぎ続けた選手たちに、深浦隆史監督は「もしかしたら避難所で(中継が)映っているかも。震災している方が勇気や力をもらえたのなら良かった」と目頭を押さえた。

 ゴール地点で仲間を待っていた五島は、被災地のために設置された募金箱を見つけると、係の人に頭を下げて回った。「たくさんの人が石川県の人のために支援をしてくださって、すごく日本の皆さんが優しい」と感謝を込めた。

 今夏にはパリ五輪が控えている。「2024年は私にとっても勝負の年になる。目標をぶらさずに持ち続けて頑張りたい」。次は世界の舞台から、被災地へ感動を届ける。

 ◆五島莉乃(ごしま・りの)1997年10月29日、石川県金沢市出身。星稜中、星稜高を経て中大に進学した。日本選手権は1万メートルでは22年大会3位、23年大会4位。22年全日本実業団ハーフマラソン優勝。1万メートルの世界選手権は2大会連続で出場し、22年オレゴン(米国)大会19位、23年ブダペスト(ハンガリー)大会20位。座右の銘は「弱くても一生 懸命」。

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