五十嵐カノア 最高峰の文武両道 ハーバード大大学院で経営学専攻「チャレンジがすごく好き」
26日でパリ五輪開幕まで半年。金メダルが期待されるサーフィンの東京五輪男子銀メダリストで、パリ五輪出場権を獲得している五十嵐カノア(26)=木下グループ=がこのほど、デイリースポーツの取材に応じた。2023年9月に米国の名門・ハーバード大の大学院に進学し、経営学を学んでいるエースが熱い思いを告白。夢舞台への思いを明かした。
パリ五輪1年前のハーバード大大学院進学。異例の挑戦を決めた五十嵐は「すごく難しいチャレンジだと自分でも知っている」と笑って明かした。
理由は「子供の頃からビジネスにすごく興味があった」とシンプルだった。幼少期からスポンサーがつき、経営を身近に感じてきた。ミドルスクールを飛び級するなど優秀だったが、ハイスクール卒業後は競技が多忙になり、学校からは離れていた。時間は有限だからこそ「時間を使うのならトップのところで勉強したい」と超名門の門をたたいた。
五輪前年の挑戦に「こんな時に何でいきなりハーバード?」と問われれば「時間も努力も必要な、そのチャレンジが自分はすごく好き」と胸を張って答える。あえて自分を追い込んだことで「中途半端ではなく100%でいられる」と競技との両立もできている。
もちろん、サーフィンも手は抜かない。22年ワールドゲームズ(WG=世界選手権相当)で初優勝。23年大会は4位で、日本男子のパリ五輪切符第1号になった。プロ最高峰チャンピオンシップツアー(CT)の昨季年間ランクは14位で、日本のパリ五輪出場枠を3に増やすなどエースの貫禄が漂う。
サーファーとしての夢は、五輪金メダルや世界チャンピオンはもちろん、ロールモデル(規範となる人)だ。同じロサンゼルスを拠点とする大リーグの大谷翔平らトップアスリートに「自分もいい成績を出したい」と刺激を受ける毎日。五輪メダリストになっても「まだまだ」と謙遜する。
24年の目標は「オリンピックで金メダルを取る」。WG(2月23日開幕、プエルトリコ)は「ウオームアップ」と位置づけ、パリへの弾みにする。「いつかサーファーだけでなく、アスリートのトップになりたい」。同じ波が二度と来ないように、人生も一度きり。文武両道の26歳が悲願の金メダルへ突き進む。
◆五十嵐カノア(いがらし・かのあ)1997年10月1日、米カリフォルニア州サンタモニカ出身。両親は日本人。3歳で米ハワイの波に乗り、世界的に有名なハンティントン・ビーチで腕を磨く。16年にCT初参戦。19年5月の第3戦コロナ・バリ・プロテクテッド(インドネシア)でCT初制覇。東京五輪で銀メダルを獲得した。180センチ、78キロ。
◇サーフィンのパリ五輪への道 出場枠は男女各24で、国の最大出場枠は男女各3。日本は男子が五十嵐、稲葉玲王、女子は松田詩野(TOKIOインカラミ)が個人での出場権を獲得し、WGに出場すると確定する。出場権を得ている男子団体はコナーが事実上の内定となっている。女子は、五輪最終予選を兼ねたWGで同代表の前田か都筑有夢路(木下グループ)が上位7人(既に出場権を得ている選手は除く)に入れば獲得できる。ともに7位以内に入った場合は上位者が得る。女子の3枠目は日本女子がWGで団体を制し、団体出場枠を得た場合に獲得できる。
◇パリ五輪のサーフィン競技 7月27~30日に南太平洋の島、フランス領ポリネシアのタヒチで開催される。会場のチョープーは世界有数の荒波で知られ、約7メートルの波が現れることもある。