五輪切符の平野美宇が涙「卓球が嫌いで、逃げたかった」4年前の地獄の日々乗り越え初のシングルス切符「自分を変えられた」

 伊藤美誠(奥)の前でガッツポーズを見せる平野美宇(撮影・吉澤敬太)
 早田ひな(右奥)、伊藤美誠(中央)の前でサーブを放つ平野美宇(撮影・吉澤敬太)
 6回戦で勝利し喜ぶ平野美宇(撮影・吉澤敬太)
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 「卓球・全日本選手権」(26日、東京体育館)

 パリ五輪代表選考の最終対象大会となる女子シングルス4~6回戦が行われた。残り1枠を争っていた2番手の平野美宇(23)=木下グループ=は3連勝で準々決勝に進出。平野の試合終了後、3番手で追っていた伊藤美誠(スターツ)が6回戦で木村香純(トップ名古屋)に逆転負けを喫し、平野にとって初のシングルスでの五輪代表が確実となった。プレッシャーに押しつぶされて地獄のような日々を過ごした4年前の東京五輪代表選考レースを踏まえ、「自分を変えることができた」と感慨にふけった。

 初戦からの苦しい試合を乗り越えた後、吉報が待っていた。一騎討ちのライバルが敗退したことで、パリ五輪代表争いは完全決着。喜びの記者会見に臨んだ平野は、目に涙を浮かべながら「五輪は小さい頃からの目指してきた舞台。リザーブ(補欠)だったり、前回はギリギリの所で(シングルス代表争いに)負けたり、何回も何回もギリギリの所で落ちてきた自分でも、こうやってめげずに根性でやれば夢は叶うかもというのを見せられた」と晴れやかに語った。

 補欠として帯同した16年リオデジャネイロ五輪の後、画期的な高速卓球で「ハリケーン」として一世を風靡。東京五輪への代表レースは序盤リードしながらも、最終盤に石川佳純との直接対決に敗れてシングルス切符を逃した。1年間の代表争い中は過酷なプレッシャーに襲われ、メンタルに不調をきたし、当時在籍していたエリートアカデミーの自室でふさぎ込んだ日もある。

 「4年前の選考では卓球が1番嫌いで、逃げたくて、背を向けたくて、毎日どうやって現実逃避できるかを考えていた。最後、石川選手と戦う時は逃げたくてたまらなかったが、今回は最後まで逃げずに戦うことができた。4年前から成長できたかなと思う。東京の時は本当に苦しくて、寝られなかったが、今回は昨日も寝ることができたし、1つ1つ成長した。人間的にも、自分で言うのもあれですけど(笑)、大人になれたかなと」

 今大会も4年前からの変化を象徴する戦いぶりだった。初戦からいきなりフルゲームの苦境。16歳の面手凜の勢いに飲まれかけたが、泥くさく気迫を出しながら4-3と競り勝った。「(今回の選考レースは)東京五輪の時には味わわなかった年下選手が向かってくる難しさはあったが、自分からつかみにいかないと、と真剣に思って、自分を変えることができた。前回達成できなかったシングルスの座を獲得できたことは、1つ自分の中で(課題を)乗り越えられたんじゃないかと思う」。かつて天然キャラでも親しまれた天才少女は、立派な世界のトッププレーヤーとして、自らの意志で夢をつかみ取った。

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